晴天の霹靂

びっくりしました

父娘エンターテインメント

素晴らしきアングラ歌集

道外にどれくらい広まっているものか定かではないが、北海道ではパークゴルフというスポーツが、主に高齢者に人気だ。 北海道特有の「冬は雪捨て場になる空き地」なんかに夏の間芝生をしいて整備しておくと、誰かの家に余っていたゴルフクラブなんかを持ち寄…

柾屋根、トタン、瓦屋根

「北海道開拓の村」という野外博物館にある渡辺商店という建築物は、父が子供の頃教科書などを買いに行った雑貨店だという。 開拓の村 渡辺商店 北海道開拓の村 「壁は白いし瓦が珍しくて、立派だなあ、と思って見ていた」と父はいう。 言われてみれば北海道…

全然ポーじゃない家族

「若い頃読んで人生に影響を受けた本は何か」というような話をしていて、その場に居た一人が「萩尾望都の『ポーの一族』」だと言い出した。 ポーの一族(1) (フラワーコミックス) 作者:萩尾望都 小学館 Amazon 周りは年を取るのにそれに置いていかれる孤独…

火事とトッカリと給食と

父76歳は小学生のとき、校舎が丸焼けになったことがあるという。 友達が火遊びをしていて大火事になり、全部焼けてしまったのでその後中学校やら公民館やらあちこちに場所を借りて分散授業をしたそうだ。 その話が気になっていたので、図書館で町史を引き、…

あるモータリゼーション世代の車遍歴

「一台目に乗ったのはパブリカUP20のグレイだ」 と、突然父がはるか昔独身時代に買った車を型式まで正確に言った。 「え、パブリカ乗ってたの」 やや頓狂な声を出した娘のリアクションに父の方も驚いたふうだった。私が車に興味あるなんて思ったこともなかっ…

誰だかわからないが押入れに結構ぎっしり居た

我が父は「親の卒塔婆を折って持ち帰った」というユニークな逸話の持ち主であるのは先ごろ発覚したことだ。 rokusuke7korobi.hatenablog.com なかなか興味深い話である、と思い返すにつれ、私はもうひとつ別の興味が出てくる。 卒塔婆を折られたところのイワ…

トマト娘の学費秘話

私は大学を出てから比較的父母と縁が薄い期間が長く、20年ぶりくらいに実家を訪れたときには母は骨壷に、父は老人になっていた。ほとんど知らぬもの同士として「骨壷と老人と私」ごっこをはじめたばかりの頃の印象深い話がある。 父が誰やら友人の家庭菜園か…

親の卒塔婆を折る話

「卒塔婆を二つに折ってリュックに入れて帰ってきたんだよなあ」 と、父が言ったときはさすがに変な声が出た。 「そっ、卒塔婆って折っていいの?」と聞いてみてから大爆笑。いいも何もないか。折っちゃたんだし。 「こう、膝でパキっと?」 「いや、さすが…

祖父イワジ

放っておくと共通の話題のない父74歳と「ネタを見つけて会話を楽しもう」企画の一環で、最近はせっせと自分のルーツを遡って戸籍を取り寄せては読み、取り寄せては読み、している。 庶民の戸籍など「生まれました、結婚しました、死にました」しか書いていな…

吉永小百合映画の秘密が解明した日

「来月は『ゴールデンカムイ』を観に行ってみないか」 と齢75の父に言ってみたのは、私なりのギャンブルだった。 原作は少年漫画であるため高齢者が喜ぶ内容である確率は低いものの、近頃昔話を積極的に聞き取りするようになり、父自身も子供の頃を思い出す…

祖父母の終戦

父方の祖父母に、私は会ったことがないのだが、父からこんな話を聞いたことがある。 戦争に行っていたオヤジ(私の祖父)が終戦で帰ってきたとき、オフクロ(私の祖母)は顔を見て開口一番こう言ったそうだ。 「食べるものがない」 やっと家にたどり着いた帰…

先祖の戸籍を取ってみる

話は、父が車を手放したことから始まるのだ。 母がなくなってから3年ほどは月命日に霊園で顔を合わせていたのが、もう車がないので毎月来るのは無理だという。たしかに交通機関を使えば片道1時間、現地集合現地解散で手をあわせる5秒のためだけに来るには…

「若くて綺麗なのに白髪染めないの?」の件

唐突に「若くて綺麗なのに白髪染めないの」と言われ、「おお、それな!久しぶりに聞いたな」と思った。 染めるのをやめて根本がスカンク模様になっていた頃はまあまあ言われたが、近頃はあまり聞かなくなっていたのだ。 (言うまでもなく「若くて綺麗」のと…

老父、車を手放す

急に気温が上がったので、ベランダやら部屋のドアなどを開けておくと、猫が得意げに家中を行き来して大変忙しそうにする。 いちいち人間にドアの開け締めを頼まずに、好きなようにどこにでもいけるのは長い冬の間はできなかったことだ。 自分の意志で移動で…

大寒波における異文化交流

母の月命日に納骨塚に集合して父娘で般若心経を唱えるという、異次元の珍妙エンタテインメントを実施するようになって三年目である。 未曾有の大寒波が来ている中、いつものように霊園に向かうと、老人は私が昨年末に編んで渡した真紅のマフラーを巻いてそこ…

秋彼岸の一日

久しぶりに食パンを買ったので、友人にもらったコーヒー豆を練り込んだミルクジャムを開封した。 グリルでパリッと焼いた薄いトースト、溶けるチーズを入れたオートミール、りんご、スクランブルエッグ。 台風がいくつか過ぎた秋らしい気候で、猫も顔をあわ…

おじいさんと、おばあさんと、知らないおばあさんと。

「姉ちゃんが泊まりに来るのでベッドを移動させたいんだが、明日か明後日でも手伝いに来てもらえないか」 というLINEが来る。 昨日まで一ヶ月もの長旅に出ていて帰宅したばかりの老父からだ。 なんだかよくわからんが、頼み事されるのも珍しいので「明日行く…

74歳のポテトサラダ

母の月命日には納骨塚に花を手向けに行く。 霊園でなんとなく父と落ち合って、二人ぽつねんと並んで般若心経納経フェスを開催するのだ。 LINEなどしていてもさほど話すこともない老人と熟女であるからして、月命日を言い訳に生存確認するのはたいへん便利な…

フリーダムお雛様の祭典

我が家には豆粒くらいのサイズの雛人形がある。 二年前に亡くなった母のものだ。 自分の持ち物を一切持っていなかった彼女は、当然亡くなったときにも何も残さなかったが、それでも唯一、超小型雛人形だけは、自分用にあったらしく、 「捨てるも忍びないので…

老人とパン

冷凍庫からパンをひとつ取り出して、ラップのままレンジにいれる。 「ハイジの白パン」みたいな白くて丸をふたつつなげた形のやつだ。 パンが庫内をぐるぐる回っている間に冷蔵庫からバターを出す。 全部5グラムずつに切れる仕掛けのついたバターケースを、…

「下の人はそんなに困ってないんじゃないか」に一票

投票所へ向かう前の午前中、ここ一ヶ月の懸念事項である「階下への風呂の水漏れ問題」について、近頃懇意の元水道屋さん(a.k.a実父)に相談の電話をしてみた。 「……ごそ……ごそごそ……もしもし…ごそごそ」 「あ、ちょっと聞きたいことあるんですが大丈夫です…

生きてきて一番驚いたことってなに?

もう二十年やそこら会っていないが、母方の祖母が存命で、今百歳くらいなのだ。 70歳前後で夫に先立たれ、そのあとずっと一人で暮らしてきて、いよいよ100歳かという頃になった昨年、今度は娘(私の母)を亡くしたことになる。 近頃少しぼんやりしてき…

自分のリスク判断においてバッハを恨むものではありません

今年は母の初盆である。 一人暮らしの父は、母が亡くなってから一年以上にわたって、のべつに緊急事態やらマンボウやらが出ている中でまともに人とも会えない状況が続いているようだ。 故人の思い出ばなしひとつする機会もろくに持てないままだろう。 「厄介…

さくら木の下、坊主めくり

数日前に観測史上二度目に早い桜の開花宣言が出たという陽気の中、月命日のお参りに行ってきた。 そこらの街路にも蕾を抱いた桜はあるが、開花している木がなかなか見当たらないのは、たぶんソメイヨシノでなくヤマザクラが多いからだろうと思われる。 そん…

『生きるとか死ぬとか父親とか』さらにうちの父親とか。

美容室へいったら、もう何年も懇意にしてもらってるおとぼけ美容師(推定50歳前後・美女)が 「三週間前に突然母が亡くなったんですよ」 という話をしはじめた。 そういうスナック感覚とも言い難い話を美容師さん側からふるのも結構変わってるような気はす…

ネギ畑に雪がふる ~ビギナーの見切り発車および先達の冷徹

ネギ畑に雪が積もった。 もとい、ネギ畑ではなくただ土が入っているだけのプランターである。 一見するとそこには土しかないが、その下一センチくらいのところには、小口ネギの根っこが十本ほど埋まっている。すなわち、私の目には細く天へ向かう青色の筋が…

どう立ち回っても後手にまわる師走との闘い ~正月の食事を考える

年末に向かって食材はどうせ高くなっていくので、年の瀬に使うとわかっていて日持ちのするものはそろそろ買い始めている。 たけのこの水煮やら、こんにゃくやら、栗の甘露煮やら。 改めて「おせち」を作るつもりはないとは言っても、元旦からお米を炊くとい…

ケサランパサランとメルケル首相

寒さが募ってくると肩こりの蓄積からの頭痛に見舞われる時期があり、今年はどうやら今がその季節らしい。 頭痛薬を飲んでコタツにあたっていると、いつの間にか眠ってしまうので大変困っている。 寝ながら困っているもないものだが、起きたときに困っている…

昭和37年卒業アルバムの異世界 ~〇〇〇〇〇タイム!!

実家から、1962年の札幌市内の小学校の卒業アルバム、というなかなかに貴重な民俗資料が発見された。 1962年小学校の卒業アルバム サイズの小さなアルバムの中に、まるで誰かが個人で作ったスクラップブックみたいに、チマチマ切り抜いた写真をめいっぱい並…

どんぐりを食べたい七十二歳の肖像

「おい、どんぐりは食えそうだぞ」 私が作って持っていった弁当を二人で一緒に食べていると、父がいきなり箸を止めて脈絡もなく言った。 ソファの方から一冊の本を持ってくる。 それは市内の図書館のラベルの付いた文庫本で、書名を見ると姜尚中の『母-オモ…