晴天の霹靂

びっくりしました

ケサランパサランとメルケル首相

寒さが募ってくると肩こりの蓄積からの頭痛に見舞われる時期があり、今年はどうやら今がその季節らしい。

頭痛薬を飲んでコタツにあたっていると、いつの間にか眠ってしまうので大変困っている。

寝ながら困っているもないものだが、起きたときに困っている。

ぼんやりした頭で目をさませば、低い位置から見上げる台所の換気扇のフィルターがなかなか渋い色に変わっているのがよく見える。

「あー、あれ。年末までに洗って取り替えないとなあ」

と思う。

この頭痛の季節になってから思ったのは何度目か。

思うだけでだいたい満足してしまうのも困ったものだ。

 

父から久しぶりの連絡がある。

「こんなになりました」

メッセージになにかを添付し忘れているのは明らかなのだが、久々の音信としてはものすごく返事にこまる。

何がどんなになったのか。

なにか添付し忘れではございませんか、と返すとその後しばし返信なし。

間を置いて、外出自粛要請が出る前に私が実家に置いてきたフウセントウワタの映像が動画で送られてきた。

飾ってきたときは真っ青な果実だったのが、ずいぶん黒ずんではぜて中からたくさんの綿毛が出ている。

しばらくフワフワの真っ白な綿毛を触ったあとで「ケサランパサラン知ってる?」という老人の声が入ってるのがおかしい。

 

さて、ケサランパサランか。

聞いたことあるけど、なんだろう?

猫じゃらしみたいな雑草のことをそう呼んでいたような気がするけど、違うのかしら。

 

コロナウイルスをめぐる状況が再び悪化して、不用意に人に会いにいけない状態になってから結構時間がたってしまったものだ。

あんなに青かった果実がケサランパサランになるくらいの時間の経過、というのはとても視覚的でちょっと切ないものがある。

この調子では話が噛み合わない可能性も高いのでケサランパサランのことは、今度会ったときに聞くことととした。

 

年末にのし餅だけは届けるからお餅は買わないで、と電話をする。

うちは毎年餅屋さんで搗きたてを買うから、雑煮の中で溶けて気管を狙ってきたりしない、しっかりしたやつなのだ。

この調子だと非接触で、玄関先に置いてくるような感じにはなるだろうけど、それは仕方ない。

 

ドイツの首相の「いつものようにクリスマスを楽しめないのは心から申し訳ないと思うけれども、今年を祖父母と過ごす最後のクリスマスにしないためにお願いします」という名演説が頭をよぎる。

自分のとこのリーダーじゃないってのは残念なことだが、同じ状況下に世界のどこかではああいうちゃんと人の心に届く演説がされてるってのは正直結構感動してしまう。

 

「大変元気ですから」

と言って父は電話を切った。

面白い人である。