晴天の霹靂

びっくりしました

読書

『ジャクソンひとり』~世界を拡張する言葉

第168回芥川賞が決まったときに、つらつらと候補作などを見ていて、受賞作はさておき(それもきっと面白いに違いないからいずれ読もうとは思ったが)、さしあたってなんだかやけに気になったのが『ジャクソンひとり』だった。 タイトルも装丁も、もうそこに…

ミラーバーン、プルースト、アンタッチャブル

「1月としては95年ぶりの高い気温」などと言われた数日間の後に、冷え込みと大雪がやってきて、結果的に道路はどこもミラーバーンの上にふんわりと新雪をのせたブービートラップになっている。 力を入れて踏みとどまるべき地点のひとつもなく、ただ摩擦係…

『言葉の獣』~近頃私も季節感が猫の姿に見えるようになりまして

最近読んだおもしろい漫画。 「言葉が獣の姿で目に見える」という共感覚を持つ女子高生の話です。 言葉の獣 (1) (トーチコミックス) 作者:鯨庭 リイド社 Amazon 「そんな共感覚設定、よく思いついたなー」と思ってみたりもしたもんですが、最近私もいよい…

去年今年こたつは猫の夢の国

ありがたいことに今年も良い正月を過ごした。 毎年、「こんなにたくさん作ってどうするのか」とひとりで呆れる正月用の料理も、老父におすそ分けしたり、友人にふるまったりするうちに、新年三日目には、はかったようにぴったりと底をつく。 中でも、これま…

『エルピス―希望、あるいは災い―』 ~東電OL殺人事件おじさんが開く突破口

師走も押し迫り、今シーズン私のイチオシドラマ『エルピス』も終わってしまった。 www.youtube.com あんまりとんでもない話なので後半はドラマの配信を待ちつつ、エンドロールでズラズラと並ぶ参考文献からKindleで手に入るものを次々読んでいた日々。 9冊挙…

2022年印象に残った小説

異形の愛 異形の愛 作者:キャサリン・ダン 河出書房新社 Amazon 世にあまねく存在する愚鈍な「フツーども」を見下し、「もっともっと奇形になりたかった」と願うサーカスの花形一家没落の物語。 物語の中で貫かれている「バラエティこそが美しいんだ」という…

『エルピス—希望、あるいは災い—』 ~マフィアルックの口の曲がった副総理は何をしたのか

『エルピス—希望、あるいは災い—』が、毎週毎回面白いですね。 www.youtube.com 最初の頃は政権から報道に圧力かけられてメディアも大変、という話かと思ってみていました。 それにしたって安倍一強政権下では絶対に放送されなかった話でしょうから大変興味…

『作りたい女と食べたい女』~コミック版の食いっぷりに追いついてくれると嬉しい

『作りたい女と食べたい女』っていう漫画が好きで読んでいたんですが、気づいたらNHKでドラマ化されていたのでちょっと驚いた。 作りたい女と食べたい女 1 (it COMICS) 作者:ゆざき さかおみ KADOKAWA Amazon 料理を「作りたい欲」ってものもあるし、「食べ…

『第七官界彷徨』~いつの間にかコミック版が出ていた

「ここのところ急に寒いから急いで形にしてしまおう」 などと思いながらせっせと毛糸を編んでいると、なんとなく尾崎翠の『第七官界彷徨』が読みたくなる。 好きな色や感触の素材を選んで「ありうべき形」を思い浮かべながら一人でちょっとずつ積み重ねてい…

『毛糸に恋した』~いろんな姿勢で編む人よ

群ようこさんの『毛糸に恋して』というエッセイ集の中に、かわいいイラストのページがある。 群さんの友人たちがそれぞれどんな姿勢で編み物をしているか、という図である。 80年代に編まれたエッセイ集でもあり、なんとなく当時の日本の住宅事情まで推察…

『指輪物語』の改訂版が出ていた

『ロード・オブ・ザ・リング』のIMAX上映を見に行くのに平行して原作の『指輪物語』も読んでおります。 映画は第二部『二つの塔』の公開を見終わったところですが、小説は第一部『旅の仲間』を読み終わったところ。 新版 指輪物語〈1〉旅の仲間 上1 (評論社…

繰り返す季節と誰かの生活を散歩する

お手洗いにかけてあるカレンダーが傾いているのを見て、さては今年も日めくりが軽くなる季節になったのだと実感した。 愛用の俳句日めくりによると、今日は子規忌である。 新日本カレンダー 2023年 カレンダー 日めくり 俳句の NK8813 新日本カレンダー Amaz…

『東京の生活史』~寝転がって読めなくて持ち運びにもむいてない本はいつ読むのであったか

文房具を探しに近所の大型書店に行くと、三連休のせいか、やけに子どもが多くて賑やかだ。 レジンキットの工作コーナーを見て、レターセットのコーナーでシールを選んで、何の変哲もないセロハンテープを買って。 さてそれから、いざ本の売り場。 「なるほど…

『悪魔くん』を読むか『パンとサーカス』を読むか

私の大好きな番組『100分で名著』の水木しげる回が大変面白かったんです。 私が子どものころは「漫画なんか読んでると馬鹿になる」の空気がまだあったので、水木サン風に言うところの「クソ真面目な凡人」を鉢巻巻いてまっしぐら目指してた私は、たいして漫…

『恐竜大紀行』~湿っぽい恐竜もいいもんだ

『ジュラシック・ワールド』の新作を観てきて、恐竜以外のシーンはほぼどうでもよかったけど、恐竜がたくさん出て来るシーンはこの歳になっても意味もなく「良い!」ことに感激した夏。 こちらの理解を超える規模で何かがでっかいってありがたいことですね。…

『雑巾がけ-小沢一郎という試練-』~アタシも強くなってやる

ひとりで開催「参院選読書週間」、次は何を読もうかと選挙区の候補者の著作など検索していると、非常に興味深いものに気づいてしまった。 雑巾がけ―小沢一郎という試練―(新潮新書) 作者:石川知裕 新潮社 Amazon 小沢一郎の陸山会事件で有罪判決を受けて公…

参院選読書~むしろ読まない方の数冊

私の選挙区では公報の到着が結構遅く公示後一週間くらい経ってやっと手元に来た。 届く前から薄々気づいてはいたのだけど、開いて思ったのは 「なんか怖っ!」 あと一歩でヘイトスピーチ、くらいのスローガンを上げているところが複数あったり、全然知らなか…

参院選読書『国対委員長』 ~ハーゲンダッツvsガリガリ君

参院選ですねえ。 2021年の衆院選のときは、私の選挙区は候補者三人だったので 「全候補者の街頭演説聞きに行ってやるっ」 と心に決め、毎日SNSを見張って、「明日5時から〇〇スーパーの前」なんていう情報を細かく拾っては自転車走らせて演説聞いて回ったも…

スワンの結婚、朝顔の一日目

プランターを覗き込んだら、今年最初の小さな芽がひとつ出ている。 朝顔の種を撒いたプランターなんだから朝顔の芽なのだろうとは思うが、昨シーズン面白がって雑にばらまいた果物か野菜の種である可能性も否めない。 しかし、去年見た朝顔の芽もこんなふう…

雪柳、黒猫、7年間なかなか寝ないマン

隣家に立派な桜の木があり、連休の訪れとともに今年も見事に咲いたものが、またたく間に終わってしまった。 「咲くも散るもあっという間だな」 と思って見下ろすと、今日は桜の隣に目も疑うほどの雪柳が花盛りになっている。 そうだった。桜の隣のあの目立た…

失われかねない時を求めて ~日々、読みたい本もたくさんある中ですが

驚くほど世界がカーネーションだらけになっている週末である。 「母の日って何を贈ったらいいんだろう」 とカーネーションを横目に、一緒にいた友人に聞かれた。 「よく知らないけど我々より上の世代はハズキルーペとか興味津々らしいよ」 というざっくりし…

『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』 ~春だからってこんなにおもしろいはずがない

桜満開のうららかな午後、花屋の前を通りかかったら色とりどりのカーネーションがたくさん並んで賑々しい。 家にあるささやかな花束の彩りに少し、と手にとってみるとずいぶんと小さな束であるのに驚いた。 一本ずつのバラ売りで250円。 そうか、そろそろ母…

『異形の愛』~ちゃんちゃらおかしいほどのフツウが見る春の夢

夢といえば誰にとってもおなじみの、汚れたトイレの夢をこのところ立て続けに見る。 思うにワクチンの副反応で寝込んでいたときに、猫が枕元に強烈置き手紙をおいていったインパクトが直接のトリガーになってるんだろう。 本当にあれには驚いた。 見るのに愉…

『ナイトメア・アリー』 ~原作が面白すぎて映画を見る前に満足してしまう事故

ギレルモ・デル・トロによる映画化が現在公開中なので、それを見にいかんがために、とりあえず読み始めた原作小説『ナイトメア・アリー』。 これがまあ予想をはるかに超えたおもしろに大満足してしまったあまり映画のほうは「配信待ちでもいいかな」くらいの…

本日のまどろみ読書3選 ~良い夢を見るための本

「まどろみ用読書」というものがある。 知識欲やら好奇心やらを満たしてくれる読書の他に、読みかけで電気を消して30秒後に夢の世界に入っても頭脳の中でシームレスにつながってくれる「起承転結とかストーリー性とか論理とかじゃないやつ」だ。 どこから…

Kindle端末が板になった朝 ~返品交換は迅速だから早めに対処しよう

軽くて快適なので寝ても覚めてもKindle端末を持ち歩いて生活している。 Kindle端末を買う前は、ちょっと手が開くとスマホを見る時間が多かったものだが、Kindleがあればその時間は自然、本を読むようになるもので、得られる情報としては私はそのほうが性に合…

フリーダムお雛様の祭典

我が家には豆粒くらいのサイズの雛人形がある。 二年前に亡くなった母のものだ。 自分の持ち物を一切持っていなかった彼女は、当然亡くなったときにも何も残さなかったが、それでも唯一、超小型雛人形だけは、自分用にあったらしく、 「捨てるも忍びないので…

『ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット』~なんとなく、大変だ

とんでもないものを見つけてしまった。 本当に大変だ。 ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット 1巻 すべてが猫になる 【kindle限定特典付き】 (ブレイドコミックス) 作者:ホークマン,メカルーツ マッグガーデン Amazon Kindleストアを開いたら出てきたのであ…

『三体』をずっと読んでいる話と、オーディブルがちょっとお得に使える話

ずーっと、ずーっと読んでおります、三体。 止まらない。 三体 作者:劉 慈欣 早川書房 Amazon そうは言っても一部『三体』二部『黒闇森林』三部『死神永生』と読み進むうちに、さすがに認めざるを得なくなってくるのが 「うむ、全然わからないし読めてないな…

たいへん寒い毎日なので『三体』を最初から読み直す

最近『三体』を読み返しております。 三体 作者:劉 慈欣 早川書房 Amazon たしか日本で発売になった2019年大ヒットして話題になっていたのにちょっと遅れてハヤカワのセールで半額になったのを買って読んだのです。 「うん、まあなんか面白いものを読ん…