晴天の霹靂

びっくりしました

『リングサイド』~ちょっぴりプロレスが染みるとき

 

2年くらい前に話題になったときに買ったまままだ読んでいなかった台湾小説を引っ張り出して読む。

なによりも表紙が素晴らしくて買ってしまったのだ。ええと、三沢と。誰だったかしら、……長州?

以前にも、心当たりの人に聞いてその答えは判明したのだけど、教えてくれる圧がすごくてうっかりまた失念してしまった。それにしたって、プロレスのことは何も知らないくせに「三沢」だけうっすらと分かるのは我ながら本当に不思議だ。パンツの色があんまりだからだろうか。

 

台湾については今年総統選があった時期にずいぶん報道を見かけた。米中の間に立たされてイデオロギー戦が激化している一方で、それとは別に、仕事もない、家も借りられない、結婚もできない、という若い世代の「誰でもいいからまともな生活をさせてくれ」という第三極とが入り乱れて、お祭りのような盛り上がりをみせていたのは少しうらやましいようですらあった。

選挙戦の報道で映っていた若者の鬱屈と、それから最近の大きな地震の報道で見かけるはっとさせられるほど日本にそっくりな町並みと。

そんなことを思い起こしつつ『リングサイド』を読むと、なんだかずいぶん染みるものがある。

 

横になってKindle端末で読書をしていると、黒猫が画面と私の顔の前に挟まりにくる。

昨日はぽかぽか陽気で「6月ごろの気温」までいったん上がったものが、今日はまた急に寒くて風も強いので、暖かい居場所を探して彷徨っているのだ。

読書端末と人間の顔の間が一番暖かくて気持ちが良さそうだ、と見当をつけた猫はたいそうご満悦で私の頭の下のクッションを揉み始める。すぐ目前でドアップで見る猫の爪はなかなか立派なものだ。ただ伸ばしたり握ったりするだけでなくて、伸ばすタイミングでおもいっきりすべての指を開いて爪という爪が一番長くなるようにみせつける。「こんな立派な凶器をこの距離で見せつけられてお互いにのんびりしていられるこの信頼関係な」と思えば、こちらも喉が鳴るリラックス気分になる。

爪シャキーン、モミモミ、爪シャキーン、モミモミ。

どうせもう続きは読ませてもらえないので猫の爪を見ながら「アイアンクロー!アイアンクロー!」と掛け声してしばらく遊んだ。

プロレスも小説も、あらゆる物語は、きっとぱっとしない生活こそを無限に救ってきたんだろう。