今月のNHK100分de名著がトーマス・マンの『魔の山』なので即効テキストを買いました。待っておりました。
『魔の山』という長い小説が好きなんです。
理解するには長すぎるので意味は全然わからんのですが、抗生物質発見前の金持ち向け結核療養所ということろが、まあ読んでて楽しい。
療養所と言っても、きれいな空気の中でしっかり栄養取るくらいしか治療の方法もないというので、一日四回も豪勢な食事をとって、散歩して、絶景見ながらバルコニーで昼寝したりしてるのです。
またこの食事が乳製品とか果物とか、とりわけ私の好物が充実したメニューなので読んでるだけでテンション上がってしまうことこの上ない。
たぶんトーマス・マンが意図した小説の趣旨じゃないよなあ、と思いつつ「なにこの療養所最高!行きたい!」という熱をこめてそこらへんばかり読んでしまいます。
最近私が週末ごとに野菜を買いに行く農産物直売所に、しぼりたての牛乳をその場で加工して農場の売店でだけ販売しているめちゃめちゃおいしいソフトクリームがあるんです。
売店の前には座って食べられるようにベンチがたくさん出してあって、みんな気持ち良い農場の風景を見ながらソフトクリーム片手に並んでくつろいでいます。
その風景の気持ちよさと、知らない人たちがいろんなところから集まってきて一斉に同じ方向を向いて安静にしてる風景を観るたびに「おっ、『魔の山』だね」と実は毎回毎回思っており、自分でもソフトクリームを買って「これ、やっぱ超美味しいよなあ」と思うたび無闇にその小説を好きになってくるのでありました。
しかしまあ、隣のベンチでソフトクリーム食べてる人に向かっていきなり「この光景、めっちゃ『魔の山』っぽいですよね?」とか話しかけたら確実にドン引きされるのはわかるので、黙して語らずやってきているわけですが、冷たいものががめきめき美味しくなってくるこの季節「そもそもあの小説はいったい何の話だったのか」というのをNHKで講義してもらえる機会がやっと巡ってきたのは大変ありがたいことと思うのでした。明らかにソフトクリームが一切関係なくとも。