amazonビデオで『PIGGY ピギー』をみました。
昨年、小規模ながら劇場公開があったときに予告映像を見て「観なくてはっ!」と思っていたんですが、こういうのって見逃してしまうんですよね。
ちょとぼんやりしているうちにすぐ終わってしまって、ようやく配信で観たのでした。おもしろくてびっくりした。
このキービジュアルで、「リベンジホラー」という売り出しだったので、この主人公がいじめられていてついにキレ、血まみれスプラッタ-で後味スッキリ映画だろ、などとうっすら思いながら観始めるわけですが全然そういうことにはならない衝撃。
サラという主人公の女子高生が非常に魅力的なんですが、冒頭でぐっと足元にカメラがよるとかわいらしいピンクのスニーカーを履いています。依存と抑圧の中で暮らしている人物の靴に注意を向けさせたとなると「なるほど、シンデレラの話がはじまるんですね!」と思って見るわけです。
サラちゃんのピンクのスニーカーは早い段階で失われてしまい、その後はほぼふさわしい履物をはかないまま、裸足だったりサンダルだったりで足元不如意の長く孤独な葛藤の中に身を置くことになります。
エンディング、厳しい闘いのすんだ裸足のサラに帰り道の足を提供してくれる青年が出てきたので、「ああ、靴を持ってくるのは彼だったのか」とこっちは観ていて安心したものです。サラも「やっと帰れる」という感じで寄り添うとっても青春映画らしいラストシーン。
シンデレラだったら「ハッピー・エバー・アフター」です。良かった良かった、と思ってたらサラは徐々に「あ、これも違うわ」という感じで身体をはなしてついに自分一人で風を感じながら、町への道を進むのです。
「プリンセスは王子に見出されてしあわせにくらしましたとさ」ではなくて、まさに血まみれの一人の戦士として町へ帰っていくぞい、というラストシーンに、ひとつのセリフもないまま移り変わっていったのでした。
青年とこのあとどういう関係になるのかは知らないけれど、それがどうであれ、尊厳をめぐる闘いから当然、彼女が離脱できるわけはないのです。
闘いがひとつ終わったところで、相変わらず帰っていかねばならない世界は身体のサイズが目立つからということで彼女をアウトカーストに置こうとする価値観の中であり、彼女を守ろうとする善意の人たちは夕食をサラダにすれば解決するんだなどというトンチンカンな思考回路で、そこで育った少女は闘い方も教えられてきていない徒手空拳の身です。
最初の闘いの帰り道がハンサムな青年のタンデムシートだったくらいのことで「末永く幸せに暮ら」せてたまるか。という、自由と孤独の風に吹かれている勇者の帰還のシーン、なかなか衝撃的に美しいものでした。