晴天の霹靂

びっくりしました

エッセイ

電子書籍と栞の思い出

Kindleを手に入れてからめっきり本は電子書籍で買うようになってしまって、 なんなら電子版で出版されていないものは買い控えたりもする。 この自分の罪深い行いのせいで、ジェフ・ベゾスが一生かかっても使い切れないお金を毎年稼ぐ一方、街の本屋が消えて…

まことに厠は虫の音によく、鳥の声によく、月夜にもまたふさわしく

洗濯物を干す前にはスマートスピーカーに向かって必ず 「アレクサ、今日雨降る?」 というお伺いを立てるのだけど、ジェフ・ベゾスが面白がって私をからかってるんじゃないかと疑うくらいの頻度でそれは当たらない。 アレクサの予言を信じて外干しをし、最後…

猫も元気で屋根と床のあるところで暖かく暮らせますように

ダウンジャケットというものを買ってみたら、あまり暖かいのでびっくりした。 ダウンってユニクロが安く出すまで、これほど誰も彼も着ていなかったではないか。 「みんなちょっと一斉にマシュマロマンみたいになりすぎじゃないのか」 と思って、ずっと古いウ…

途中から急激に陽気になるカンバーバッジの歌

思い起こせばもう10年近くも前ですが、BBCでカンバーバッチがやっていたシャーロックが非常に好きでした。 SHERLOCK / シャーロック シーズン1【輸入盤国内仕様】 アーティスト:デヴィッド・アーノルド,マイケル・プライス Rambling Records Amazon 「チャラ…

君たちは越冬するのかしないのか

初冬の低い陽射しを受けた掃き出し窓に、カメムシが張り付いている。 「あれ、お前さんまだいるの?」 昨日も、同じくらいの時間に、同じ場所で見かけた訪問者ではないか。 もうずいぶん気温も低いから、こうして日向ぼっこしてからでないと餌を捕りにもいけ…

君がそれを測るとき、君の生活もまた測られている

これまで生きてきた中でほぼ意識にのぼったことがなかったけれど、生活に入り込んできた瞬間からのQOLの上昇に驚いて、これまでの人生をちょっと反省する。 そういうものが、日々の暮らしの中には時々出現する。 あんまり地味すぎてそのうち便利であることさ…

ロマンスの秋 ~エミューと少年

小学校の近くを歩いていたら、敷地のまわりの柵みたいなところに男子児童が一人で腰掛けておりました。 とくに周囲に友達がいる様子でもなく静かにしていたのが、何を思ったか誰もいない歩道に向かっていきなり大音声で呼ばわることには、 「いつかお会いし…

生きてきて一番驚いたことってなに?

もう二十年やそこら会っていないが、母方の祖母が存命で、今百歳くらいなのだ。 70歳前後で夫に先立たれ、そのあとずっと一人で暮らしてきて、いよいよ100歳かという頃になった昨年、今度は娘(私の母)を亡くしたことになる。 近頃少しぼんやりしてき…

おそらく人生最高発熱記 ~モデルナワクチン二回目

目が覚めたのと、大雨が上がったのと、夜が明けたのが、おそらく全部ほぼ同時だった。 いつもどおり、窓の見えるスツールに座って温めたコーヒーを飲んでいたら、窓越しに見える電線にびっしり溜まった雨粒が、朝の光を受けてキラキラ輝いていることに気づい…

追いモデルナ ~こういう状態を何にたとえるべきなのか

「なにか先生に聞きたいこと、不安なことはありますか?」 と、持参した問診票を確認しながら受付の女性がフェイスシールドごしに聞く。 モデルナワクチン接種二回目である。 「一回目の副反応、まだ残ってるんだけどいいですか?」 ちょっと肌寒いのを我慢…

ご近所銭湯「赤鬼の湯」

インターネットで近所の銭湯を検索していると、たいして見たくもないクチコミがうっかり目に入る。 「湯が熱い」 「常連優先で雰囲気が怖い」 「煙突から煙を出していて近所迷惑」 などなど、そもそも銭湯をどういう場所だと認識しているのかが不安にもなる…

ご近所銭湯「孫の湯」

広い浴場の流し場の端っこに陣取って頭を洗っていると、ふたつほど横でおばあさんが二人おしゃべりしながら背中を流している。 別の銭湯で、こんなふうにグルーミングを見た時は、今どきこんな古風なご近所付き合いがあるものだろうかとびっくりしたものだが…

ご近所銭湯「狐狸の湯」

古い銭湯に行くと訳がわからない深さの浴槽に出会うことがある。 立って入るんだか座って入るんだかよくわからない水深に一瞬 「子どもとか、うっかり溺れないのか?」 とびっくりするのだけど、ゆっくり入ってると水量が多いだけあって水圧のかかり具合など…

世界の実家から ~緑の攻撃が有効になるとき

なんだかわからないが唐突に知人から粉末青汁をもらった。 実家から送られてきたのだという。 日本薬健 金の青汁 純国産大麦若葉 46包 日本薬健 Amazon 会ったこともない他人の親の、無言の圧力がおかしかったので 「四十を過ぎて実家から前置きもなく青汁が…

そもそもなぜエプロンは。

「風呂場のエプロン」の話を、数日前からあちこちでしている。 風呂場のエプロンが、ある時いきなり落ちたのだ。 伝わる人には「ああ、そう」というだけの話だが、 伝わらない人には「風呂場のエプロン」という単語が全然説明できないことが、困ったことに妙…

たとえば、猫の耳

猫の耳をのぞきこむと、ちょっと不安になる。 彼らの耳の奥は、なにかしら人間の理屈では把握できない謎の形をしている。 「これって、つまりどうなってるんだろうか?」 と思ってじっと見ていると、ちょっと怖いような不安な気持ちになってくるので急に気ま…

秋の猫を撫でる

スマホに「天気痛予報アプリ」を入れているので 気圧が乱れる直前になると「天気痛に注意です」という通知が来たりする。 なんとなくやる気がでないタイミングと天気痛警報のタイミングが一致すると 「はいはい、私のせいじゃないもんねーっ」 という開き直…

モデルナアーム1号出動!

一回目ワクチン接種に行ってきた。 たまたまコネで大学の接種会場で受けさせてもらった都合で、周囲に若者が多い。 受付で予診票を出すと 「学生証ありますか」 などと聞かれる始末。 あらやだっ。まー、なんということでしょう! などとモッキモッキしなが…

いたずら好きの猫の鼻先を舐める仕返し

腰高窓の横にあるデスクに向かって仕事をしていると、近頃涼しくなってすっかり調子のいい猫が突然、 「んにゃっ」 と言いながら窓越しに私のすぐ脇に飛び込んでくる。 隣の部屋の掃き出し窓から出てベランダでひとり遊んでいたものを、私を驚かすためにわざ…

朝顔の蔓に追いかけられる

なんとなくいつもより疲れやすいような気がして 「なんだ、何事だ、何の体調不良だ?」 と思ってそわそわしたが、落ち着いて考えたら残暑のせいだ。 今年は夏の滑り出しが異様に暑かったせいで気温に対する警戒心がちょっと平年とずれているが、30度超える…

今の君はびだびだに光って

秋というのは、とりわけ子どもの声がよく通る季節であるような気がする。 道の向こうを歩いていた少年が、藪から棒に大声で歌い出したのが風に乗ってまっすぐこちらに届いてくる。 「ビーダービーダー光るーお空のー星よー」 ビダビダ光る星を、直ちに私は連…

塩レモンゼリーとアイスノンの日

かくして世界は意識が遠のくほど暑いわけである。 パソコンに向かっていたのが、突然ガバっと立ち上がって、自分でもなんだかわからずに家中をぐるっと一周してから、またもとのところに戻ってきて座ったりなんかする。 「あれ、なにしにあっち行ったんだっ…

夏に育ちゆく生命体

すくすくと育って楽しかったプランターの豆苗栽培も、二回目を再収穫したあたりから 「……なんかすごい草食べてる?」 という味に変わってきた。 青臭くてちょっと苦い。 それほど積極的に食べたくなる味でもないので、じゃあもうあとは猫に好きなだけ食べさ…

きっと君は世の中の怖さをしらなくて親をハラハラさせているのだ

大きなミズナラの木陰でカラスが鳴いている。 なんとなくむくっとしたまるっこいシルエットで、大きな口を開けて鳴くと鮮やかな腔内の赤が目立って見える。 「なんだか妙にひょうきんなカラスがいるな」 と思って目をやったら、そばにいたもう一匹のカラスが…

米津幻師『死神』~「えっ、俺?」のところ最高

米津玄師『死神』をずっと聞いております。 何回見ても最後で変な声が出る。 www.youtube.com 米津玄師って人を「なるほどあの声はこの人か」としっかり認識したのって2018年の紅白歌合戦の『lemon』の時でした。 徳島の美術館にあるミケランジェロの『最後…

7月初旬のあれこれ。

豊作豆苗プランター。 猫と私とで交互に食べているが、水さえやっておけば見る間にぐんぐん伸びてくるので大変楽しい。 ちょっとずつ増やしながら何回目くらいまで収穫できるものか実験中。 生産性とか追求してない謎のプランター。 やたらとにょきにょき伸…

ヘップバーンである夜もある

真夜中、ずっとパソコンをつけていた部屋は熱がこもって暑いので、虫が入らないように室内の電気は消し、窓を開け放って寝る前の換気をする。 ベランダのすぐ下は小さな小さな公園があり、誰もいない滑り台の脇にオレンジ色の街灯がひとつ静かについてほの明…

アカシアの雨には打たれ、カラスに追われ

公園や道路沿いのあちこち植えられているニセアカシアが花の季節で、マスクをつけたまま下を通ってもずいぶんと甘い匂いがする。 ここまで匂いの強い花だったのか、とマスクのおかげで今年改めて知ったのだが、それもいつの間にか散り始めて道路が花びらで覆…

銀の靴、少年のプリン

なんだかいきなり気温があがった。 一冬使ったラグやらこたつ布団やら半纏やらを全部まとめて洗い、狭いベランダにヘンポンと翻す一方、トランクルームから久しぶりの扇風機を運びだしてホコリを払うのは、楽しい作業である。 しかし、まだ身体が慣れていな…

フルートの散歩道

近所の公園を歩いたら、急激に新緑に力がこもってきているので驚いた。 じっと力を溜めていた生命にとっての数日ってこれほど爆発的なものか、と目を見張る。 緑が風に揺れると隙間からいっせいに降り注いでくる快晴の青も素晴らしい。 下生えが低いために見…