晴天の霹靂

びっくりしました

たとえば、猫の耳

猫の耳をのぞきこむと、ちょっと不安になる。

彼らの耳の奥は、なにかしら人間の理屈では把握できない謎の形をしている。

「これって、つまりどうなってるんだろうか?」

と思ってじっと見ていると、ちょっと怖いような不安な気持ちになってくるので急に気まずくなって目をそらす。

たぶん、外に向かって開いている器官だから、それなりに脆い器官でもあり、

精密にできている受信機だから、それなりに繊細なパーツでもあるはずなのだ。

脆さと繊細さは、あんまりじっと見つめると怖い。

 

洗いたてのタオルケットの上でぐるぐる言ってるごきげんな猫を手のひらで撫で回すと

向こうもぐりんぐりんと頭を擦り付けてくるから、いきなり指先が耳の奥に入ったりする。

あるいは、日に透かすと少しピンク色に見える三角の耳を指でこすり合わせるようにして挟むと、そこだけ少しひんやりして気持ちがいい。

されるがままになる様子をみるに、本人はあんまりその脆さや繊細さを気にしていないようだ。

だからこそ、こちらが仰天するほど雑な感じで、後ろ足を耳の中につっこんで強引に掻くような真似すら平気でする。

「なんだ、案外大丈夫なんじゃないの」

なんて思ってふっと息を吹きかけてみたりすると、急にぴったりと後ろに倒して外界から遮断してしまう。

指はいいのに、息はいやなのか。

 

安心するものの中には、ちょっと不安の要素が入っている。

たとえば、猫の耳。