晴天の霹靂

びっくりしました

2024-01-01から1年間の記事一覧

今ひとたびの逢ふこともがな ~今昔「もう死にます」対決優勝

日本文学における二大「もう死にます」といえば、1つ目の有名どころはやはり『夢十夜』の第一夜ではないですか。 こんな夢を見た。 腕組みをして枕元に坐っていると、仰向きに寝た女が、静かな声でもう死にますと言う。女は長い髪を枕に敷いて、輪郭の柔らか…

『ドッグマン』~決闘に行くときもコーギーは笑っているのね

『ドッグマン』観てまいりました。 かわいい犬にはかわいい犬の仕事があって、怖い犬には怖い犬の仕事があるところが良かったですね。全員いい子です。 www.youtube.com 児童虐待のシーンとかはやっぱりちょっときついので途中何度か「なんという気持ちにさ…

火事とトッカリと給食と

父76歳は小学生のとき、校舎が丸焼けになったことがあるという。 友達が火遊びをしていて大火事になり、全部焼けてしまったのでその後中学校やら公民館やらあちこちに場所を借りて分散授業をしたそうだ。 その話が気になっていたので、図書館で町史を引き、…

まだふみも見ず ~千年前からマンスプ事件

百人一首をつらつらと見ていて「現代語訳を読めば一応意味は分かるけど、だからなんなんだ」の筆頭だと思っていたうちのひとつ。 『眠れないほどおもしろい百人一首』 調べてみればこの小式部内侍という人は天才歌人・和泉式部の娘で、この時15歳位。母娘で…

あるモータリゼーション世代の車遍歴

「一台目に乗ったのはパブリカUP20のグレイだ」 と、突然父がはるか昔独身時代に買った車を型式まで正確に言った。 「え、パブリカ乗ってたの」 やや頓狂な声を出した娘のリアクションに父の方も驚いたふうだった。私が車に興味あるなんて思ったこともなかっ…

『犯罪都市 NO WAY OUT』~車に轢かれるとちょっと痛い

『犯罪都市』の新作観てきました。 いやあ、楽しかった楽しかった。最近こういう、ただただ楽しい思いをしてサクッと帰るタイプの映画が減っている気がするので大変ありがたいですね。 www.youtube.com シリーズも三作目になってマ・ドンソク無双も進みに進…

『文豪怪奇コレクション 恐怖と哀愁の内田百けん』 ~恐怖は耳からやってくる

冬は毎年のことであるが、寒い日が続くと肩こりから来る頭痛が長引く。立ち動けないほど酷いということもないが、やはり横になっている方がずっと楽で、なんとなく「あれもしなくちゃ、これもしなくちゃ」などと往生際の悪いことを口では言いながらずるずる…

『ハンテッド 狩られる夜』~判断を全部間違える人っているよねえ

『ハンテッド 狩られる夜』を観てきましたよ。 90分程度の低予算ジャンル映画としては非常によく出来ていて「いやー、なんかおもろいもん観たな。しかしよく考えるとあれは一体?」というようなことを反芻しつつ満足して帰りました。 www.youtube.com 「ひど…

2月に買った電子書籍6タイトルくらいと番外編

今月も以前買った百人一首を読んでたり、昔買った大長編SF『三体』読んでた時間も長かったので購入タイトル自体はそんなに多くないのです。 哀れなるものたち (ハヤカワepi文庫 ク 7-1 epi111) 作者:アラスター グレイ 早川書房 Amazon 映画が面白かったのだ…

誰だかわからないが押入れに結構ぎっしり居た

我が父は「親の卒塔婆を折って持ち帰った」というユニークな逸話の持ち主であるのは先ごろ発覚したことだ。 rokusuke7korobi.hatenablog.com なかなか興味深い話である、と思い返すにつれ、私はもうひとつ別の興味が出てくる。 卒塔婆を折られたところのイワ…

中国ドラマ『三体』を観終わる ~30話ずっとおもしろい

Huluにてドラマ『三体』観終わりました。 日本語字幕で音声は中国語のみ、かなりしっかり画面に集中する必要がある視聴環境での50分前後の30話です。 時間は掛かったけど大変面白い。そういう話だったのかっ! www.youtube.com 第一部は原作で2回くらい読ん…

昔はものをおもはざりけり ~昭和歌謡の本歌取り

マツコの知らない世界の「昭和歌謡の世界」が面白かったのです。 tver.jp 世代的に懐かしい、というのもずいぶんありますが、大変興味深かったのが『勝手にしやがれ』が『プレイバック part2』のアンサーソングだという分析でした。 放送上では一応「諸説あ…

『光る君へ』7回おかしきことこそ ~テーマパークみたいな京都

大河ドラマ『光る君へ』の話をしますよ。 第5回あたりまでの、紫式部も道長も若く身分も軽くて比較的汚い格好で街中をほっつき歩いてる感じは楽しくて「なるほど大胆なアレンジ!」と思ってたんですが、最近ちょっと暗雲立ち込めてきていませんか。 大丈夫…

『ボーはおそれている』~常に最悪のことを考える人あるある

『ボーはおそれている』を観てきました。 いいですね、中年にとって帰省がいかに恐怖かを体感する3時間。あまりにも身につまされるので大爆笑でありました。 www.youtube.com 不安のあまり「不眠のせいで朝寝坊したりして」とか「鍵盗まれたりして」とかちょ…

トマト娘の学費秘話

私は大学を出てから比較的父母と縁が薄い期間が長く、20年ぶりくらいに実家を訪れたときには母は骨壷に、父は老人になっていた。ほとんど知らぬもの同士として「骨壷と老人と私」ごっこをはじめたばかりの頃の印象深い話がある。 父が誰やら友人の家庭菜園か…

忘らるる身をば思はず ~2つしかないもののバランスが狂う

バレンタインデーだというので、最近は各種SNSで簡単チョコレートレシピみたいなものを大量に見かける。別段興味もない、と思っていても、本当に簡単でちょっと美味しそうだったりすると気になってはくるもので、 「この生クリームとチョコレートだけででき…

『哀れなるものたち』~変な生き物見てるだけでも楽しい

『哀れなるものたち』を見てきました。 「また140分とかあるのか。これだから最近の映画は」 とかうっかり思っていたんですが、マーク・ラファロとウィレム・デフォーを見て大爆笑してたらあっという間に終わってしまった。 あんなにためらいなく机に頭ぶつ…

風のかけたるしがらみは ~あの駐輪場の川下あたり

現代人として”しがらみ”と聞けばほとんどの場合、思い浮かぶのは 「分かってんのよ。理屈ではそうだってわかってんだけど、言うほど簡単には行かないのよ。しがらみとか色々あって」 というやつではないだろうか。だいたい愚痴の文脈しか浮かばない例のあれ…

一万円以下の口腔洗浄器はどれくらい使えるか実証 

私が口腔洗浄器を大変気に入って使っていることは、以前にも書いているのです。 rokusuke7korobi.hatenablog.com 気に入っているというか、ひとたび使うともう「それのない暮らしには戻れない」それが口腔洗浄器。 運用としては 1,口腔洗浄器で歯間の汚れ…

いつみきとてか ~その古い手口はおよしなさい

私が子どもの頃は、電話というのは今のようにいちいち持って出掛けたりする必要のないもので、ずっと茶の間においてあった。掛かってくると家族の誰かが出て、誰宛なのかを聞いてその人に取り次ぐシステムだったわけだ。 時々は若い男の声で「◯◯(名字)さん…

「その髪どうしたの」「あなたこそどうしたの」の件やら手入れやら

■たまには白髪の話。 もはや髪を染めるのをやめてどれくらいたったのか思い出すこともほぼないんですが、染めてた部分を切って全頭地毛になってからも1年ほど経つんじゃないかしら(ちなみに齢46)。 正面から見るとかなりグレイっぽく見えるのと、分け方に…

1月に買った電子書籍17タイトルくらい

今月はどう考えても『源氏物語』と『百人一首』ばかり買ってるし、しかも似たような書籍ばかり買いすぎてるような気がしたので振り返るのが怖い。 ちなみに古典しか読んでないわけでもなくて、huluで『三体』を観始めたタイミングでもあるので過去に買った「…

『ゴールデンカムイ』~悶々とする北海道民

『ゴールデンカムイ』を観てきました。 www.youtube.com はじめに、言いやすい方の感想から言うと、アクション映画としては思ったよりはるかに良くできていました。いろんな工夫あるアクションが次々入るので、そこらへんはわりと楽しめました。 そのぶん芝…

『光る君へ』(4)五節の舞姫 ~天女も楽ではない

百人一首の中で初心者でもわりと取りやすいでおなじみの句に「天つ風」があります。 天つ風 雲のかよひ路 吹ききとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ (僧正遍昭) 宮中の儀式で踊る少女たちが天女みたいなので、空に帰ってしまわないように雲に通せんぼしてほ…

中国版ドラマ『三体』~huluに入ったなら入ったってもっと言ってよ

数年前に世界的に大ヒットした中国SF『三体』のドラマ版が、いつの間にかhuluに入っていたので大慌てしている今日このごろです。 SF小説としてはめずらしいくらいアッツアツの話題になっていた2020年、私もミーハー心を発揮して買って読み「たしかに異様なお…

親の卒塔婆を折る話

「卒塔婆を二つに折ってリュックに入れて帰ってきたんだよなあ」 と、父が言ったときはさすがに変な声が出た。 「そっ、卒塔婆って折っていいの?」と聞いてみてから大爆笑。いいも何もないか。折っちゃたんだし。 「こう、膝でパキっと?」 「いや、さすが…

ちはやぶる ~パリス・ヒルトンのインスタのようなものだとしたら

ちはやぶる、と聞けば落語の滑稽噺がまっさきに思い起こされる育ちなので、かるたとなれば札は取れるが、意味の方は現代語訳を読んでもあまりピンと来ない。語感はやたらゴージャスだけど、くくり染めって言われても、ねぇ。 田辺聖子の小倉百人一首 これが…

『光る君へ』第3回と、映画版『源氏物語』あれやこれ

おもしろかったから今週も『光る君へ』の話をしますよ。 だいたい大河ドラマはよそ見したりしながら「ついでにチラチラ見る」くらいのものだと思っていましたが、第三回「謎の男」は普通にしっかり見て、最後に「えっ、もう終わり?」と思ったので、面白いの…

祖父イワジ

放っておくと共通の話題のない父74歳と「ネタを見つけて会話を楽しもう」企画の一環で、最近はせっせと自分のルーツを遡って戸籍を取り寄せては読み、取り寄せては読み、している。 庶民の戸籍など「生まれました、結婚しました、死にました」しか書いていな…

ながめせしまに ~振り向けばさだまさし

いつまで正月の話をしてるんだ、ってことではありますが、2023年末の紅白歌合戦のこと。 新年早々、お節食べつつ追いかけ再生で紅白を見ていると、唐突にさだまさしが出てきて『秋桜』を歌い始めたのです。 言わずと知れた、山口百恵のために書かれ、実際に…