『ゴールデンカムイ』を観てきました。
はじめに、言いやすい方の感想から言うと、アクション映画としては思ったよりはるかに良くできていました。いろんな工夫あるアクションが次々入るので、そこらへんはわりと楽しめました。
そのぶん芝居にはあまり興味がないためか、油断するとただ突っ立って喋りがち、というのは惜しいことだなあと思いますが、それでも雪景色がいいので意外となんとかなった感もあり。
一方、雪国映画としては恒例の「大型の重機を何台も入れないとできないレベルの完璧な除雪をしちゃうのってなんなのだろう」ということは、今回も思いました。
だいたい「開拓の村」でロケをするから、やたら道路が広い上にあらかじめ完璧に除雪されてしまっているということなのかもしれませんが、はっきり言って北海道民って冬は雪のことばっかり考えて暮らしていますから、不自然な除雪を見せられると気になって仕方ない。人力での除雪って車一台分くらいのスペースやるだけで足腰バキバキになるもの。街中総出でやっても目抜き通りの端から端まで真っ平らにするのは無理なんだよなあ。
動物映画としては、リスがエゾリスでもシマリスでもなかったのはちょっと面白かったです。たぶん外タレのリスさんなのですかね。あと、ヒグマが襲ってくる前にちゃんと足音を立てたり吠えたりして杉本が死なないように気をつかってくれるのがかわいらしい。主人公の命は大事ですものねえ。
それからエンタメに対する感想としては一番難しい先住民表象について。
公開前から一番目について気になっていたフライヤーのコピーが「猛き者達よ、奪い合え」だったのです。その周辺に主要キャラクターがほぼ全員配置されています。デザインが散漫すぎるというのはさておき、見る限りでは奪う者だけがいて、奪われる者はいない、という構造です。どうしても、見る前からこれが気になって仕方なかった。
時代設定が日露戦争後の1900年代だとすると、すでに強制労働や女性の略取、主食であるシカやサケ漁の禁止、開拓史の設置などによって数多くのアイヌ部落が消え、相当厳しい状況をアシリパたちは生きているはずです。
そのなか武装して乗り込んでくる杉本の「アシリパさんは知恵だけ貸してくれればいい」や、土方歳三の「北海道はこれから戦場になる」、あるいはフチの「アシリパを嫁にしてくれ」などのセリフが、まるで対等で公平な関係性であるかのように語られているのを見るにつけ、「エンタメだからと言って本当にこうとしか描きえないのだろうか」とは思ってしまうのです。
重要な歴史を無知の闇の中に置き去りにして、小道具や文化考証に力を入れたことをもって「はじめてアイヌをかっこよく描いたエンタメ」と誇るのはフェアなことなのか。
続編も作られる心づもりであるようだし、それに耐えうるくらいおもしろい作品ではありました。当然感じるべきいたたまれなさ、バツの悪さ、自分を偽善者だと感じることも十分覚悟してこっちも観に行くので、より誠実であろうと悩んだ末の続編がぜひ見たい。