晴天の霹靂

びっくりしました

こたつと猫と熱い紅茶と

ずいぶん急に気温が下がったので外を歩くだけでもなんとなく勝手の違う疲れ方をするようになった。帰宅するなりバタバタとお湯を沸かして大急ぎでティーパックの紅茶を淹れ、近所の直売所で買ったはちみつをひと匙溶かす。猫舌の上を用心深くそろそろと通過した甘い紅茶が喉から胃まで落ちていきながら血管を通って身体の隅々まで熱を伝達していくのがCG映像で見るようにはっきり感じられる。ああ、これは。

これは、あれだな。寒い季節の甘い紅茶ときたら、ちょっとした肩こりか、あるいは冷えによる胃の不調か、疲れからくる家庭不和か、ひょっとしたら軽い捻挫くらいまでなら、ぎりぎり治るんじゃないかな。

プルーストだって、きっとこうやって、書く方にとっても読む方にとっても修行みたいに長い小説を書き始めてしまったに違いないのだから、一杯の熱い紅茶には実際何か驚異的な力があるのだ。

 

思ったよりはるかに、紅茶の一杯に元気づけられてしまったことに気をよくして、朝から困った顔をしてウロウロしている猫のために、こたつを引っ張り出した。数ヶ月ぶりに部屋の真ん中に出現したこたつを見て猫は昨シーズンの記憶をたよりにおそるおそる中へ潜り込んでいく。

「入っても何もおもしろいこともないけど、これってこんなだったっけ?」

しびれを切らして出てくるなり、私の顔を見てしきりに問う。去年と何か違っているのではないか、と。

それはそうだよ、君。今年の冬だって光熱費は高いに決まっているんだから、いくらなんでも10月のうちからスイッチを入れてあげるわけにはいかない。

しばらく不満げにしていたけれど、粘りきれなかった猫はあんがい大人しく私の膝の上で丸くなることを選ぶ。そうそう、寄り添えば、君も私もふたりとも暖かい。

スープジャーにたっぷり入れた紅茶をちょっとずつカップに移してふーふー飲みながら、気温に合わせてふわふわしてきた猫の毛を撫でる。永遠に終わらないと思った猛暑がつい昨日のことみたいだけど、どんなものでもはじまりがあれば終わるもので、それがありがたいときと、寂しいときと、両方あるね。

 

 

 

長年取り組んでいる「寒い室内で何時間も飲み物の温かさを保つには何が最適か」問題。片手で蓋があくタンブラータイプは意外と冷めやすいとか、魔法びんタイプは洗うのが面倒なうえに飲み物の香りが味わえないとか。どれを選んでも一長一短悩ましい中、今年はスープジャー推し。

蓋が圧倒的に厚いから載せておくだけども冷めないし、ガバっと開くからティーパックの飲み物も入れやすいし香りも楽しめる。構造がシンプルだから洗いやすいくて匂いもつきにくい。開けるたびに蓋の裏に水滴がつくからそのその対応だけできれば、これはだいぶアリ。