晴天の霹靂

びっくりしました

今年一番の寒気、初雪の猫

日差しが良いのでてっきり暖かいのかと思って外に出たら、何事かと思うほど寒かった。あとで知ったことには早朝に初雪が降り、今日は今年一番の冷え込みだったのだという。

 

近くの農産物直売所に行く。

採れたてのはちみつを買い、見慣れない種類のかぼちゃを買い、食べたことがないほど美味しいリンゴチップス、調理に使った経験はないけどピザの上でよく見かける葉っぱルッコラ、じっくり干した干し大根と干し椎茸などを買う。こんなに豊かにいろんな食材が手に入るのはまっしぐら寒さに向かっていく季節の恩恵と思えば、寒いも楽しいものである。

倉庫を利用した寒い売り場の片隅には大きな灯油ストーブがあり、おっすおっすと力強く燃えている。壁に向かって伸びている低めの曲がり煙突に「頭に注意してください」と書いて貼ってあるのを見て、なんとなく懐かしいような気持ちになりながら、きりきりとマフラーを巻き直して寒風の中、また出ていくのだ。

 

用事を済ませて帰ってみても、急な寒さにすっかり驚いた猫はもう出迎えに来てもくれない。寂しいのでこちらからこたつの裾をそっとめくると、黒猫はまんまるな目をランランとさせてこたつ布団越しに私の方向を向いていている。なんだ、起きていたのか。

 

買ってきたはちみつ入りの紅茶を用意してパソコンを立ち上げると、どういうわけだか私の動画サイトには幼少期の美空ひばりの映像が大量に出てくるようになっている。

「そんな検索、一度もしたことがないのになんで?」

と思いながら、このへんはネットの恐ろしさ、その気もないまままほぼ無意識でクリックして再生しているのだ。

姿は完全に子どもなのに、歌い出すとむしろ初老で、目から入ってくる情報と耳から入ってくる情報がどうしても同期しないことに一瞬体が硬直して凝視する。

「なんだなんだ、この動画はどうなっているんだ。ディープフェイク?」

と見ていたら、さらに驚いたことに、猫がこたつからわざわざ出てきて横に座って一緒に見始めた。

「見るの?」つやつやした丸い背中をそっと撫でて声をかけると、猫は一瞬私の顔を見てからまた少女美空ひばりをまばたきもせず凝視、一曲全部聞いてから「それじゃ、帰るわ」とこたつに戻っていった。

猫にとっては、私では寒気に勝てないけれど、美空ひばりなら余裕で勝つのだ。仕方あるまい。