こたつ布団と下敷きを洗う。
6月の末にもなって、というところであるが「温まる」という機能を使わなくなったあとも、なんとなく布がひらひらした状態になっていることは猫にとって大事なことで、カーテンやら、こたつ布団の陰から
「猫どーこだっ?」
とランランと光った目を垣間見せてくるのに使うのだ。
そろそろこたつを片付けてもいいかなあ、どうかなあ、という猫との無言の駆け引きは一月ほども続いたが、夏至前後の日差しがこのためらいに決着をつけることになる。
「家中にある大きな布類を全部洗うのです」
北緯43度の地域に強い日差しはほぼ神のお告げ。
布団を取り払って数ヶ月ぶりに骨だけになった座卓の様子に、猫は戸惑いを見せるが、日光殺菌した布類が取り込まれて部屋が日向の匂いで満ちると満足気にチェックして回る。
食べる量が減ったとも思わないのに、近頃ちょっと彼女の身体がしまってきたのは、部屋とベランダだけとはいえ、冬よりよほどよく動くせいだろう。
「んにゃっ」
と声を漏らしながらベランダの腰高窓を飛び越えて私の顔を覗きに来る時、人と猫はともに再び太陽の季節が巡ってきたことを喜びあっている。
冬のフクフクした猫もかわいいが、黒豹のミニチュアのように筋肉の隆起を陽に光らせながらいたずらのネタを探して回る猫をみるのは猫を飼う醍醐味だ。
ワンシーズン使って、またあちこち薄くなったカバーを刺繍糸でチクチク補強してから押入れの奥深くにしまいこむ。
また君と一緒に季節が一巡り。