晴天の霹靂

びっくりしました

寒中の時の女神や猫光る

ひとくち噛むとまぶたの裏にバター色の稲光が見えるくらいおいしいクロワッサンを売っているパン屋さんを見つけた。

3年もこのあたりに住んでいるのにちっとも気づかずに暮らしていたとは、私かパン屋さんのどちらかが時空のエアポケットに落ちていたのに違いないのだが、何のきっかけで2023年1月に世界線が合致するに至ったのかもわからない。

人生には、けったいな出来事がしばしば起こるのだ。

 

外干しができない真冬は脱衣所で空気清浄機をかけて洗濯物を干している。

それでもなかなか乾かない厳冬期は空気清浄機のそばに小さな電気ストーブもおいて乾燥した空気を脱衣所に循環させる。

その洗濯用の小型ストーブの前に、今日にかぎってどういうわけか猫が座り込む。

普段はこたつの中でのうのうと寝ている猫が、何を思ってビニールクロスのひんやりする床の上に座り込んでいるのか。

「そんなところ、冷たくないかい。こっちに来たら」

気になって呼びにいくと、自分からさっさとすり抜けてこたつの中に帰るのだが、気がつくとまたストーブの赤い光の前に導かれるように戻る。

 

いつも互いに見つめ合って暮らしているから、相手に普段と違う行動をされると落ち着かなくって仕方ない。

それでも各々、曲げられない意志というものを持つ日もあるのだ。