晴天の霹靂

びっくりしました

寒い季節の簡易猫ドアを考える

寒い季節になってきた。

リビングのドアを開けておくと廊下からすーすーと冷たい風が入ってきて室温が下がる。

ドアをしめるか、しめないか、それが問題だ。

 

我が家には4歳になる黒猫がおり、自分が主人だと思いこんでのうのうと暮らしている。

それでも去年までは、なんとなくトイレや餌がひと通り揃っているリビングを自分のテリトリーだと思って暮らしていたので、寒い季節はドアをしめてもそれほど深刻な苦情は出なかったものだ。

事態が変わったのは、今年の夏、一緒に育ってきたトラ猫が病気でなくなってしまってからである。

病と死の気配を恐れた黒猫は、リビングを避けて逃げ回り、しばらく廊下にあるクローゼットに閉じこもったりして暮らした。

さすがに気の毒なので、家中どこでも行きたいところに居たいだけ居られるように気をくばるようにしていた。

そうやって一人と一匹、ときに身を寄せ合い、ときに距離を取って仲良く暮らすうちに季節は流れ、ついに寒い季節がやってきたのだ。

自分が行きたいときに行きたい場所へ行けないことを良しとしない専制黒猫爆誕の冬である。

 

どうせすぐ一番暖かい部屋に戻ってくるのだし、何度寒い部屋を見に行ったってたいした代わり映えもしないのだからずっとリビングのこたつに居てくれれば良さそうなものだが、彼女は行きたいときにどこにでも行けることが自分の尊厳にとって非常に大切だと決めてしまったようだ。

ドアがしまっていることに気づくと、すぐに苦情を言いに来る。

 

「ただでさえうちには部屋全体をあたためるストーブがないのだから、南側の部屋にたまった貴重な暖かい空気をお前のために全部逃してしまうわけにはいかないのだよ」

というようなことをこんこんと猫に説明……できたらいいのに。

 

最近のドアノブは猫が勝手に開けられるタイプも多いが、古い造りの我が家は昔ながらの丸い取っ手で、人の手でしっかり握らなければ開けられない。

それでも、最後までカチャッとしめてしまわずに半ドア状態をたもっておけば、猫は器用に前足を隙間に差し込んで自分で開けることはできる。

「ドアを完全に最後まで締めないでおく」という程度の協力ならば、こちらとしてもやぶさかではないのだ。

しかし、問題は開けたあとを閉めないので、そこから冷たい風が入ってくる、ということになる。

もちろん、賃貸の住宅ゆえ、猫ドアをつける、というのも少々厳しい。

  

しばし考えて、ためしにドアの外側にサイズを調節できるカーテンレールを取り付けたみた。

カーテンなら猫は自由に通り抜けれられるし、ドアが少々開きっぱなしになっていてもその先にカーテンがあればダイレクトに部屋の熱が持っていかれる事態は緩和される。

 

吊り下げるカーテンは、断熱を考えれば生地が厚めで裾も床につくくらい長いものがベストであろうと色々試してはみたが、結局閉めるときにドアに巻き込まれたりするし、下手にドレープなどがあると人間の出入りに面倒くさいので、軽くて扱いやすいシャワーカーテンにした。

ドアを閉めたときに巻き込んでも、ナイロン生地は滑るのでさっと引っ張れば抜けたりして割と使いやすいのだ。

断熱という観点では落ちるだろうが、それでもあるとないとでは差が出るし、頻繁に使う場所なれば出入りのときにストレスにならないというのは何より大切なことになる。

 

 

人間の出入りの際は、ドアをあけたあとでカーテンをめくるというひと手間増えるので、ベストの解決法とは言えないだろうが、そう簡単にドアを加工できない賃貸住宅にはまずまずの方法なのではないか、と今のところは思っている。

この簡易人猫共用ドアで厳寒期を乗り切れるかどうか、今年の冬の実験である。

 

 

 

猫飼いの理想としてはもちろんこれだが、賃貸住宅ではおいそれと手が出せない。羨ましい。