今さらだけど熱烈に見ている『ゲーム・オブ・スローンズ』、シーズン2まで見終わりました。
入り乱れて過ぎて誰が誰やらすぐわからなくなるんですが、本来、こういう複雑な登場人物相関図が苦手な私が、わからなくなったら何度でも原作本でもどって確認しつつ地道に進むという、珍しいパターンのハマり方です。
自慢じゃないが、『ゴッドファーザー』でさえマーロン・ブランド以外はいまひとつ見分けのついていないこの私なのに!
何がおもしろいって、小池百合子みたいな人がいっぱい出てくるんです。
頭が良くて判断力も行動力もあって、どんな困難な状況でも生き抜く人であろうことは間違いないんだけど、信念で動いてる様子はないし、どこに向かって突っ走ってるの全然わからない。
誰の視点に立って見ても「それであんた、敵なの?味方なの?」ってなる、そんな小池百合子さんがいっぱい出てきたら、そりゃあ話は複雑になります。
とりあえず「この人がこのストーリー全体の良心なのかな?」というポジションの人が早々に失脚して死ぬので、見ててえらいショックなんですが、それをもって「この話は勧善懲悪ではぜんぜんないからね」っていうことが宣言されます。
良心では生き延びられない、the政局。
かと思えば、嫌なやつとして華々しく登場したキャラクターが、「クソみたいな手札の中でそれでも生き抜くために腹をくくるしかない」という決断にいたった不自由を知るにつけ、とにかくあっぱれな命根性ではある、と評価上がったりもします。
昨今アドラーの『嫌われる勇気』がベストセラーになってるのを見たりするに、「やはり本邦はかくも人に嫌われることが恐ろしい風土なのだな」と身にしみてしまうなか、「別に人に好かれるために生きてませんから」というキャラクターは爽快感がある。
そうかと思えば、本当に嫌なヤツが、水戸黄門ばりにわかりやすい懲らしめを受けて死ぬパターンもあり
「なんだ、勧善はないのに懲悪の方はたまにやるんかい!」
となるわけですが、たぶん勧善より懲悪のほうがエンタメには欠かせない要素なんでしょう。
道義心より「ザマミロ!」のほうがよっぽどアドレナリンが出るということは、見てる側だってたいした倫理観を持っているわけではない。
どの生き様に反感をもち、何に「ザマミロ!」と思い、どの一言が胸にささるのかによって、見ている自分も試される。それがゲーム・オブ・スローンズなのさっ。
シーズン2で割と気になった人物。王族でイケメンキャラのジェイミー・ラニスター。
捕虜としてズタボロになりつつ国境を護送される途中、武装した大女の衛兵にずっと
「うわ、君って昼間に見ると一段と醜いね。それだけブスだったら処女でしょ。ね、処女?」
などと、バカな小学生みたいなことをずっと聞いていて、目的がわからない。
信じがたいほどデリカシーはないが、ある意味、別け隔てなく誰に対しても無礼で、風向きを見ながら侮辱する相手を選んだりしないぶん、妙に筋が通って見えるときがある。なんなんだ。
テレビドラマシーズン2に当たる原作。面白い。
都知事選直前に出てだいぶ話題になった本。
高くて買えないなあ、と思っていたらKindleの半額ポイントバックセールになってうっかり買ってしまった。
ノンフィクションとしては筆致が憎さげすぎるのではないかと、ところどころハラハラするのも含めて、『ゲーム・オブ・スローンズ』ばりに面白いのでびっくりした。
完全な余談ながらこの本に関して私の一番好きな総括。