晴天の霹靂

びっくりしました

大雨にてキーボード浸水事件

やけに雷鳴の轟く薄暗い日だなあ、と思っていたら突然の大雨でまさにバケツをひっくり返したような騒ぎ。

それも開け放した窓にまっしぐらに吹き込むような突風まで起こって、数分のうちに部屋の真ん中くらいまで、まさかの水浸しである。

運が良いことはパソコンの電源が入っていないかったこと。運が悪いことは、しかしキーボードの充電をしていたこと。

 

ノートパソコンは拭いてひっくり返して放置したことで、どうやら事なきを得たのだけど、気に入っていたワイヤレスキーボードはもう電源も入らなくなってしまった。元々、水濡れして一度使えなくなってしまったというものをお下がりでいただいたものなので、さすがに二度目の復活はないのかもしれない。

なにかあったら困るから、と予備でおいてある有線キーボードは、しかし大変に癖のある人間工学なんちゃらタイプで、久しぶりに引っ張り出して使うと、「そうそうキー配列に慣れるまでのストレスに耐えられずに予備用に格下げになったのだった」と思い出した。熟成させても、使いにくいものは相変わらず使いにくい。

キーボードが使いにくくて頭の中の情報処理のスピードと手先の出力スピードが合わないときのストレスたるや、一日で総白髪になるんじゃないかと思うくらいのものだ。

 

慣れるのを待つ忍耐力もないので、壊れたものと同じ機種のキーボードが中古で出ていたのを買う。

歴代二千円くらいのものばかり使ってきた身の上には、なぜキーボードが2万円以上するのか理解できないものであるが、実際にえらく使い勝手が良くて離れがたい以上、この流れは致し方あるまい。

水さえぶっかけなければパソコン本体を買い替えてもずっと使えるのだから、本来張り込んでもよい道具のはずだ、と己に言い聞かせる。

 

もちろんそれだけで済むものでもない。

一応パソコン機器全部のケーブル類を抜いて乾かすやら、濡れた本を拭いて回るやら、カーペットを拭くやら、オロオロ歩く猫をなだめるやら。「結局今日という一日はなんであったのか」と呆然とするくらい時間を取られてしまった。

 

あーあ、なんだか疲れる一日だったなあ。

と思いながらデスクに向かって、ストレスのたまるキーボードではなくガラスペンを取り出す。

あの大変な大雨が来るまで何考えていたんだっけ。

クールダウンを兼ねてぽつぽつと、思い浮かんだことを書きつける。ときどき、ガラスペンをくるくる回して光が当たる色を眺めながら、インク壺に筆先を落として金木犀色の液体が吸い上げられていくのを見つめたりしながら考えごとをしていると、なんとなく「まあいいか」という気にもなってくる。

普段はなかなか掃除できないパソコンまわりの大掃除にもなったし、パソコンは無事だったのだし、まあ、大丈夫ってことよ。

 

ガラスのペンっていうやつは、キーボードに向かってるときには絶対に出てこない言語が出てくる、不思議な出力器具だ。

こんな雨の日には、持っててよかった。