晴天の霹靂

びっくりしました

年の瀬じゃらじゃら

猫に責められるほど寒い日が続いている。

ピンクのかわいいスイートピーを見つけたので買って帰ったら、帰り道の15分くらいの間に花びらが凍って薄茶色に変色してしまった。

氷点下の中を繊細な花びらを持つ植物を持ち歩いてはいけないことを知る。

寒い中咲いた花に、ずいぶんかわいそうなことをしてしまった。

 

時々お香を買う雑貨屋さんで、ガラス製の魔除け唐辛子が並んでいるのを見つけた。

たしか昨年の今頃も並んでいてずいぶん欲しかったのだけど、魔除けやらお守りやらむやみに集めても仕方ないので我慢したのだ。

それにしても、私は唐辛子のデザインがどうやら好きである。

色も形も「とっても美味しい果実」の見た目をしているところがフルーツ好きの目と心を強く引きつけるんだろう。

唐辛子の辛味成分カプサイシンの受容体は、哺乳類や昆虫にはあるが鳥にはなく、だから鳥だけが食べて種を遠くまで運んでくれるのだという。

そんなふうにして繁栄したら今度は「この辛さがいいんだよ」とか言い出して喜んで食べる好き者が出てくるなんて「ふざけるなよ人類」と、唐辛子の方でも思ったことだろう。

それとも、いやま人類は鳥よりも長距離を移動するのだから、唐辛子の深謀遠慮勝ちというものか。

 

20センチくらいあるストラップにビーズのような小さな唐辛子がびっしり通されたそれは見るからにガラスの感触が気持ちよさそうである。

また、ちょっとよろしくないことがずっと心に気にかかっていた日でもあったので

「これも縁ということで良いのではないか」

と、買ってみる。

パソコンのモニタの横にフックでぶら下げると、ちょうど机にすれすれの高さだ。

パソコンの静電気だか熱だかを受けて、よく見ると先端が小さくゆらゆらと揺れる。

嫌なことがあったときに、視線を移して一瞬その場から感情を引き離すきっかけにするのにちょうどいいくらいの、催眠的な揺れ。これはいい具合だ。

なんとなく触って手の内でジャラジャラ言わせておくにも楽しい手触りがする。

ささやかながら良い買い物をした。

 

薄く薄くなってきた日めくりは、あんまり軽いのでついに心細げに傾くようになってしまった。

気づいて直せば、今度は自然に逆方向に傾く。

暦が傾くというのはその一日を雑に扱っているようでいかんと思っていたが、どうにもならないのでついに諦めた。

新年になって新しい重い暦に替えたときの安定感が、一層身にしみるというものだ。

暦が頼りないのを励ますのもあと一週間くらいのことではないか。これも愛嬌。

 

あとは年内最後のゴミの日をうっかりしないように気をつけて、猫のトイレの丸洗いをしてやり、正月に見る用の「普段ならなかなか見ない変な映画」を選んでおく。

つまり、年の瀬だ。