開闢からひと月ほどとなる我が家のぬか床「マコンド」が順調である。
何を漬けても美味しいのでせっせと漬けてはせっせと食べてるうちに気づいた。
私は「これ、生じゃん!」となるくらいの浅い漬かり具合が好きなんである。
どんぶり一杯食べたいから。
大量に食べるために、歯ごたえバリバリ、塩気はうっすら、という具合がいい。
そして生活リズムになじませるために、だいたいのものが24時間で食べ頃になる程度の発酵具合に調整しておきたい。
それらを考え合わせるに、今のこの季節が私にとってはぬか床ベストシーズンである可能性がある。
今はまだ夢のようであるが、やがてはやってくるに違いない暑い季節に向けて、ぬか床マコンドと緊密に連絡を取り合いながら様々な気候を乗り越えていくことが肝要といえよう。
今回の新天地における秘密兵器は「漬けもの名人」である。
過去の経験を鑑みるにどうやら茄子を漬けるのがうまくない私が、
「これで綺麗に浸かるようになるならずいぶん安い買い物だ」
と思って買ったぺらぺらの銅板である。
底の方に沈むとなかなか見つけられないくらい小さなものなので、もはやぬか床マコンドに入れっぱなしのままほとんど存在も忘れているくらいだが、お陰で茄子の美しさは素晴らしい。
色もよく、皮も固くなることなく、むしろこんなに簡単な漬物、「どうやったら失敗するのであろうか」と首をひねるくらい簡単に美味しく漬かる。
(もっとも皮が柔らかく仕上がるのは季節柄かもしれず、盛夏の茄子だとどうなるかはこれから徐々に判明するはずだ)
とにかくぬか床マコンドは良い調子だ。
何をやってもうまくいくようで、栄枯盛衰の歴史の中には不思議と、こういう黄金時代というのは必ず組み込まれるものらしい。
人類の孤独と欲望と叡智とロマンを吸い込んで大きく育てマコンドよ。