晴天の霹靂

びっくりしました

猛暑と読書と猫と

今年の夏がいかに暑いかという指標は人それぞれだと思うが、私はついに水風呂の中で『シャイニング』上下巻を読み切ってしまった。

純粋に、水風呂の中でだけ読んでいた小説で、読み切ろうとも思っていなかったわけだが、いつまで経ってもあまりにも暑く、水風呂から出ても具合が悪くなるだけで他になにか有意義な活動ができるわけでもないので、なんとなく居付いた結果ついにホテルはジャックもろともボイラー爆発してしまった。

幽霊も酒も怖いが、猛暑も怖い。

それにしても「暑くて他に何もできないのだから」と割り切ってしまえば猛暑は猛暑なりに読書がはかどるのはなかなかの発見だった。

おかげでこの観測史上最長の真夏日更新中、書籍代がおそろしいほどかさんではいるものの、学生時代でもないのにこんなに腰を据えて次から次へと本を読む時間が湧いてくるというのは、降って湧いた幸運とも言えば言える。

 

もうひとつ、読書と猛暑に関する興味深い発見がある。

アイスノンにこめかみを載せて横になって読書をしていると、立ち上がったときの平衡感覚の失い方が尋常ではないのだ。

最初こそ、熱中症気味ではあるし、ふらつくのは体調のせいかと思ってもいたが、常にアイスノンを使ってるときにだけ起こる現象なので、たぶんそれが原因だ。

思うに、頭の片側だけ30度を軽く超える温度にさらされて血管が膨張し、逆サイドは局所的に冷やされて血流が減っているせいで、頭蓋骨内の左右で極端に血流に差が出ていることによるのではないか。

などと、しょっちゅうクラクラしながら私は考えた。

そうだとすれば、立ち上がる前にいったん左右反転して反対側も冷やしてから立ち上がれば安全なはずじゃないか、とは思うのだが、馬鹿なので毎回イチかバチかで勢いよく立ち上がってしまう。自分の思慮が浅いせいでわりと危ない。

 

猫も30度も後半の気温になってくるとさすがに辛そうで、日中はいつものカリカリをほぼ欲しがらない。

心配なので水分の多いチュールを冷蔵庫で冷やしたものを時々食べさせると、それは嬉しそうにする。

深夜を回ってさすがに少し風が涼しくなってくると、カリカリに多めのかつおぶしをかけてやったりして、ふたりで夜風にあたりながらなんとなくいつまでもいちゃいちゃして遊ぶ。

猛暑の慰労会である。

「今日は辛かったねえ。明日も暑いってよ。たくさん食べておきな」

毎年こんなに暑いとなると、いつか自分のためではなく猫のために、エアコンが必要になってきたりもするのだろうか。

 

そういえば北海道はあまり暑いので小学校で臨時休校と短縮授業が相次いでいるそうなのだけど、多くの子はエアコンのない学校からエアコンのない自宅に移動しているのだと思われ、みんなどうしているのだろうか。