晴天の霹靂

びっくりしました

冷やしちゅーる、断られました

あんまり暑いのでこの夏は「ぬるめの水風呂」に良く入っている。

しばし水風呂に浸かったあとで、夏の風に吹かれて外を歩くと完全にプールの帰りの気分がするというのは、興味深い今年の発見。

プールって塩素の匂いがトリガーで想起される体験とばかり思っていたのだけど、「寒くはない程度の水温」のあとで「生暖かい風」にさらされる感覚というものまで肌が記憶の引き出しにしまってあるなどとは、開いてみて初めて気がつく記憶の意外なチャンネルではある。

 

家のあちこちを移動しながら長く伸びて寝ている猫が気の毒なので、水分補給用ちゅーるを買って冷凍してみた。

普段はおやつの類は与えてないのに加えて、この猛暑に冷凍仕様とくれば

「きっと喜ぶぞぉ」

という下衆な下心を持って、扇風機から付かず離れずのポジションに寝そべっている猫の目の前で凍ったそれをちゅるちゅると押し出してみる。

ミニサイズのアイスみたいで、なかなか美味しそうなのだ。

気怠げな猫は「いい匂いするね」と顔を近づけては鼻先で温度を確認し、「なにこれっ、食べるものじゃないよ」という顔をする。

「いいから、ちょっと舐めてみてごらん」

と褒められたさゆえいつになく辛抱強い私。

匂いに惹かれては近づき、鼻先に感じる慣れない冷たさにドン引きする猫。

そういえば、猫との関係で私はいい加減学んではいたのだ。よかれと思ってやったことはだいたい裏目に出ることを。

「もういいからほっといて」とやがて猫はどこぞへ消えていき、凍ったちゅーるを片手に持ったまま、私は成すすべもなく溶けていく様子を見つめる。

なぜだ、どう考えても美味しいだろう。