晴天の霹靂

びっくりしました

猫と破壊力の午後

「あっ、猫だーっ」

などと窓の外からにぎやかな声が聞こえる。

「猫」と聞くとこちらも気になってナンダナンダとベランダに出る。

私の住んでいる住宅の敷地と公道との境界に柵があり、その柵にぶら下がるようにして小学生が数人、公道側から敷地内のにある猫のひたいほどの公園を覗きこんでいる。

果たして、本当に猫は公園の中に居た。

私も数回見かけたことのある黄色っぽくてフサフサの毛並みをした穏やかな猫だ。

この春くらいから近所をウロウロしているのを見かけるようになったが、おっとりした性格と、見たところ栄養不足でもないし健康不安もなさそうなので、たぶん自由気ままにどこかの家で飲食してる猫なのだろう。

 

「おい、ちょっと来てみろって。猫いるー」

穏やかな猫と、それを見て和んでいる私をよそに、小学生男子はそこらへんを歩いている友だちまで大音声で呼ばわって大変なさわぎようである。

「ねこちゃーん。にゃーん」

次々に小学生特有のよく通る声を響かせ続けるものだからなんとなくこちらは気が気がじゃない。

せっかく公園でくつろいでるんだからあんまり驚かせてやるでないよ。

と、気になってベランダを出たり入ったり、そわそわうろうろ。

無理に追いかけ回したりする子たちでもなさそうなのは見てればやがてわかるし、猫の方でも気にせずくつろいでいるので、私が気にすることは全然ないのだが、それにしてもよく通るあの声。

大人であればあの音量で発生するのは誰かを威圧する時くらいだろうが、彼らは単に音声出力の調整が苦手だというだけでかくも空が割れそうな声が出てしまうのだ。

なにそれ、その声帯どうなってんの。

 

何に対してハラハラしてるのか、もはや自分でもわからないままに、いくら大声を出しても疲れない小学生と、キンキンした声を向けられても動じない猫を交互に観察する。

やがて黄色のおっとりした猫は、のそのそとヤブの影を通ってどこかへ消えていき、それと同時に小学生も瞬きする間にさーっと捌けた。

一瞬でなにもなくなった、ごくごく平凡な狭い公園を見下ろす私がまた一人、午睡の夢のようにとり残される。

ただ猫と小学生がいただけなのに、なにゆえその破壊力。