アニメ『オッドタクシー』が面白いよ、と言われたのです。
チラッと見るに、「冴えない中年のタクシードライバーが代わり映えのしない毎日の中で出会う風変わりな乗客たちとの何気ない心の交流」を描いた日常系であろう、という風に受け取ったのです。
そういうことなら雰囲気で見とけばだいたいわかるだろうと思ったものだから、風呂上がりにドライヤー掛けたりなんかしながら流し見をはじめました。
私、主人公の小戸川とほぼ同世代なので、最近ローションパックなんかやるようになったりしましてね。
コットンを、濡らしてからこう薄く割いて化粧水ちょっと垂らして顔じゅうにベタベタ貼って放置するんです。
そうするとあらびっくり。日々に潤いが足りていたころのあの頃の記憶にたった三分で戻れるというカラクリ。
ようするに、見てるこっちがジェイソンで画面の中がオットセイ(だと思ってたらセイウチだったようだ)、という不真面目極まりない態度で臨んでおりました。
それくらいのノリで流していたら画面の方では女子高生失踪事件とか言いはじめ
「おやおやこれはどこへ行くのかな?」
となる。
そうこうするうちに本格クライム・サスペンスになってきたので、
「しまった、最初からちゃんと見ておくんだった!」
と悔やむ羽目になるわけです。
進むに連れて話はどんどんハードボイルドになってくるし、西部警察みたいなカーチェイスまで始まるのでこちらとしても困惑のあまり姿勢を正さざるを得ない。
最後に向かってなおさら世界観も急拡大、
「出た、『E.T.』からの、『シェイプ・オブ・ウォーター』!」
とか話の拡張方向にいちいち唖然としてたら、最終的に
「カフカだったのかーっ!」
という結末で、いやびっくりした。
だいぶびっくりした。
色々書いといてなんですが、何も知らずに見るのが絶対おもしろいよね。