晴天の霹靂

びっくりしました

猫を拾う遊び

近頃、猫を拾う遊びがはやっている。

 

そもそも我が家には、猫が二匹いる。

ちょっとばかり屈折した性格のおじさん虎猫と、思いついたことを秒で全部やりながら家中をかけぬけるギャルの黒猫である。

おじさん虎猫は時として、やや悲しそうな目で少し離れたところから甘え上手な黒猫を見てしんねりしていることがある。

途中で猫を増やしたことでそれまで彼が一身に浴びていた愛情を勝手に分割してしまった飼い主としては、負い目に感じていないこともないのだ。

 

「あれあれ、こんなところにかわいい猫さんがいるね。

どうだい、うちに来るかい?

おいしいカリカリがたくさんあるし、暖かいところで自由に遊べるよ。

かわいい黒猫も一匹いるけど、その子も親切にしてくれると思うよ。

ピクニックではアイスクリームとかチョコレートキャラメルだって食べさせてもらえるし、新しいドレスを作るときは、流行のパフスリーブにしてもらえるように頼んであげるよ(後半は『赤毛のアン』からの流用)」

 

など言って冷蔵庫の前あたりに寂し気に坐っているおじさん猫を撫でまわしながらかきくどく。

猫をかわいいと思っているという気持ち以外は、どれをとってもだいたい嘘しか言っていないわけではあるが、猫にも

「いま、なんかこっちに需要が向いている!」

という気配だけは伝わっているようで、神妙な顔をして撫でられながら話をちゃんと聞いているのが可愛い。

最終的には抱き上げて私の机のあたりまで連れてくることでこの寸劇は終了するのであるが、最後まで猫の方から断られることはない。

 

徹頭徹尾、ほとんど嘘しか言ってないわりには気持ちいいというか、どちらかというといい事をしているような気にすらなるあたりが醍醐味でもある。

かわいい女の子に声をかけて登録料とかレッスン料とかをだまし取るアイドルスカウト詐欺とか、こんな気分なんだろうか、などと愚にもつかない連想をする。

 

自宅で拾った猫でも、何匹ひろっても、猫はかわいい。