晴天の霹靂

びっくりしました

暑がる猫、暑がらない猫

昼間の気温もだいぶ上がってきて

家のいたるところでしまりのない猫が転がっている。

あまり行く先々にいるので

「いったい何匹いるんだっ!」

といきなり疑心暗鬼になったりするが、冷静に数えるとちゃんと二匹なのだ。

 

そしてこの季節からやたらどこにでも転がっているのは

正味一匹、2歳の黒猫の方だ。

 

5歳の虎猫は季節の変わり目のせいなのか少し食欲がおち

抱き上げても暑いともいわずに案外静かに腕の中で休んでいたりする。

新陳代謝の良い若者の方が暑がりそうなのは予想もつくが、2歳と5歳くらいの差で、こんなに体感温度が違うものだろうか。

 

お前も、ほんの数年前までもっと露骨に素っ頓狂な性格だったものだったけど

大人になると生き物は、こんなふうに「普通」に近づいていくものなのかね。

 

来たばかりで手のつけられないほどやんちゃだった黒猫と、遊びともテリトリー争いともつかない無限のおいかけっこばかりしていたころ。

好奇心旺盛でおもちゃの紐を飲みこんで腸閉塞を起こし、一晩中吐き続けながら衰弱していった黒猫を、側に坐り込んで一生懸命舐めてくれていた日ををふいに思い出したりする。

ねえ、あれは本当に長い夜だったね。

朝を待って緊急手術のための動物病院に入院させ、急に緊張がほどけて泣きながら一人で帰ってきた飼い主を、今度はなぐさめてくれたあの頃。

 

いつも世話になってばかりなのに、あのやかましい黒猫についかまけて、ろくなお礼の仕方もしらなくってごめんよ。

抱っこしてベランダの風に当ててやると、眼下に広がるこずえの中に小鳥の声をじっと聴いている。

静かな猫だ。

 

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