晴天の霹靂

びっくりしました

夏の夜風の通り道

ここ数日は最高気温も30度を下回っており、全国的にみれば「涼しくていいわねえ」のジャンルになるはずの北海道であるが、お言葉ですが私は暑い。

今年は、気象庁発表の気温と体感にずいぶん差がある感じがするのが不思議なのだけど、下の階が現在空き部屋で、カーテンもついてない南向き窓の直射日光にさんざん温められた空気が夜間にうちに上がってきてるのではあるまいか、という気もする。

 

深夜に目が覚めて「結構汗をかいているからちょっと麦茶でも飲んだ方がいいな」と思う。

新月過ぎたばかりの暗い夜の部屋をほぼ手探りでキッチンに向かうと、冷蔵庫の前にブラックホールのごとき漆黒が丸く口を空いているのに目を疑った。

おそれをなして足をとめ、闇の中の闇、黒の中の黒をじっと凝視すると、闇はみるみる長く伸び、小声でにゃあと言って廊下へ出ていった。

暗闇の中で麦茶を取り出し、飲みながら考える。

なぜうちの猫が冷蔵庫の前で寝ているのか、と。

 

カーテンが掛かっているとはいえ、窓は開いており、廊下のドアも開いていて部屋の外から中へ空気が流れるように扇風機も回っている。

なるほど冷蔵庫の前がちょうど夜風の通り道なのだ。

「そうか、ここは気持ちがいいな」

麦茶片手に冷蔵庫の前にしばし佇む。

 

夏に過ごしやすい場所を知りたいのだったら猫のあとをついて歩けばいいのはほぼ間違いがない。

彼らは一切日が入らない一隅とか、もっとも風の涼しい場所とか、人間の気づいていない細かい部屋の居住性の差異を季節ごとにすべて記憶している。

ただし、猫に居心地のよいところを教えてもらっても、それはクローゼットの最奥だったり、天袋の中だったり、椅子の下だったり。

人間にはほぼ活用の不可能なスペースであることがほとんどで、よって猫のサンクチュアリに我々は入れてもらえないのである。

「しかし、ここなら寝られないこともないな」

と一瞬思うが、私に何かあったとき冷蔵庫の前で倒れていたら事件と思われかねないのでやめておくとする。