この時期によく出回っている、収穫から時間が過ぎて味が薄くなってきているりんごを、ぬか漬けにしてみる。
半分に切って、そのままぬか床に押し込んで一日。
柔らかくなってるので皮も芯も種もそのまま半月切りにザクザク切って、胡瓜やら大根やら人参やらの他の野菜と一緒に朝からりんごまるごと一個である。
ほんのりの塩味と、なまっぽい食感と、乳酸菌の酸味と、果物の甘さと。
噛んでいるうちにくせになる風味で、シーズン終わりで安く出回るこの時期ならではの贅沢であることは間違いなく
「売り場からりんごがなくなるまで毎日漬けようっ」
と決意しつつ、軽快に食べる。
果物の少ないこの季節の、今年新しく見つけた楽しみである。
近頃ぬか床の瓶の蓋を開けたときに、少しセメダイン風の刺激臭を感じるようになっていた。
混ぜてしまえば匂いは消えるし、漬けた野菜は美味しく浸かってるので
「別に気にしなくてもよいのだろうけど」
とは思いながら、それでももう少し乳酸菌のバランスを整えればこの匂いもしなくなるのであろうと考えた結果、ビオフェルミンを2錠放り込んでみた。
おもしろいもので、翌朝ぬか床の蓋を開けたらもう酸っぱい匂いをしなくなっている。
当然のこととして、どうやら漬物の酸味もまろやかになっているのである。
あんなに小さい粒、ふたつくらいのことでねえ。
やはり菌を育てるのは抜群に面白いものだ、などと思いながら、今日も今日とて新しいりんごの真っ二つやら、訳あり茗荷やら、なにやらかにやら、ぎゅうぎゅうに漬け込むのである。
ぬか床の中には、旬の野菜とちっちゃい明日への希望が埋まっている。