晴天の霹靂

びっくりしました

外にハネていいなんて聞いてなかった

思うに、私の髪は長く伸ばしていくとゆるいウェーブなのだ。

毛が本当にまっすぐな人というのはあんまりいなくて、たいていの人がそういうものらしいというから、そうなんだと思う。

若い頃は人生の殆どがショートカットだったので気にしたこともなかったし、長くしてみたら当時の美容師が縮毛矯正をかけるようになったのでやはり気づかなかった。

その後お世話になったどの美容師さんにも

「全然縮毛矯正なんて必要ないのになんでかけてたんですか」

と驚かれ、実際自分でもそう思うのだけど、自己主張弱めの人間が美容師と友好的になろうとして、言いなりに高い施術を受けてしまうのはありがちな現象ではある。

伸ばしたこともなかったので、任せる以外に何もアイディアがなかったのだ。

 

そんなわけで、縮毛矯正などせず、ミディアムからボブくらいの長さでいることが多い昨今、私は気づいた。

放って置くと片側が外巻きになって、反対が内巻きになるのである。

顔の両側にひらがなの「し」が一個ずつ並んでる感じで、まあちょっとおもしろい。

これを美容師さんはどうするかというと、どの人もブローで両方を内巻きにするのである。

「なるほど、そういうものなのだな」

と私は思った。

毛とは内側に巻くものなのか、と。

 

しかし、外側に向かって「し」になっている毛は、自分でいくらやっても絶対に内側を向かない。

私は美容師さんに聞いてみた

「自分でやると、こっち側だけ絶対に外にハネるのは、なぜなんでしょうか」

びっくりしたことに、美容師さんはこういった。

「えっ?そうですか?なんでだろう?」

ブローが上手すぎて自分でどういう技術を使ってるのかまったく意識にのぼっていないパターンであった。

予想以上に参考にならないリアクションだったので本当に驚いたが、この人が私が人生で一番好きだった美容師さん(猫好き)である。

一年近くまったく行けてなくて寂しい。

 

しかし長年任せっぱなしにしていた美容師におんぶにだっこ方式から離脱したお陰で、寂しさと引き換えに得たものもある。

とりあえず髪について自分で考えねばならないことが増えた。

さすがに、顔の両側に「し」をぶら下ておくのは、あまりよろしくないのではないか。

そう思って、他のみなさまはどうしていらっしゃるのか色々調べてみたところ、すごいことを発見した。

どうも「外はねワンカール」というスタイルが流行っている気配がある。

「うっそ、毛って内向きに巻かなくてもいいのっ?」

と、昭和生まれびっくり。

 

このヘアスタイル、野面の私に似てるみたいだけどなあ。

そう思って、内側に向いてる方の「し」をちょっと濡らしてくいっと外向きにしてみた。

外を向く「し」をうちに向けるのはえらく難儀なのに、内を向いてる「し」を外に向けるのは理不尽なほど簡単だった。

より自然な分だけ、むりに内向きを目指して力尽きた「し」より、ほぼ何もせずに奔放に外を向いている「し」の方が仕上がりもご陽気で良いようである。

 

「ああ、外ハネか。外ハネという概念になぜ今まで気づかずに来てしまったか!」

と、頭を抱えると同時に、今気づいて本当に良かったとも思う。

危うくドライヤーの熱風で自分の髪から水分を奪い続けることに人生の多大な時間を費やすところであった。

素晴らしい発見に気を良くしたので、ついでに眉切バサミで、持ち前の癖がいちばんやんちゃにハネるくらいの長さまで自分でジョキジョキとカットした。

ますます美容室には行きづらくなりはしたが、「自分で色々やっちゃう感」はなかなか気持ちが盛り上がる。

 

物事は、こういうわけのわからない感じでいきなり解決することが、あるもんだな。

 

 

 

 

 

私の髪に奔放をもたらしてくれた素晴らしき文明開化、ディフューザー

やわらかく拡散させた風と低めの温度で乾かすと、高温強風乾燥のときとは違う、ありのままのレリゴーヘアーが出現。