猫は常からトトトトと走ってくるなり、いきなり腰が抜けたようにバタっと横倒しになる。
業界用語で言うところの「へそ天」である。
「さあ、撫でろ。さあ!さあ!」
と、猫からすれば当然のことを言っているわけであるが、あんまり唐突なので人間はいつもびっくりさせられるものだ。
残念だが、近頃うちの猫は「へそ天」より面白い遊びを考えた。
眼の前でバタッと倒れた猫を見て、
「そんなに足腰弱いと野生では生きていけないんだぞ」
などと愚にもつかないことをうそぶきつつにやけた飼い主が腹毛の柔らかいところを触らんとにじり寄ってくる、その瞬間
「何すんの、このド変態っ」
くらいの勢いでいきなり飛び起きてトトトト、と逃げるのだ。
この飼い主の尊厳を猛烈に砕きにくる遊びを、
「ものすごく面白い!」
と思ってしまった、小さい頃から手塩にかけて育ててきた猫や猫や。
お前はそれほどに悪い遊びを、いったいいつどこで覚えたのか。