晴天の霹靂

びっくりしました

花の名は。

農産物直売所で見かけて突発的に買ったローズマリーの苗に、いつの間にかぽろぽろと青い花が増えている。

「雑草みたいにむやみに丈夫なハーブらしい」と聞いたのでなんとなく雑な心持ちで植えたものが、こちらの気持ちにいじけることなく地道に花を咲かせてくれるのは、大変に可愛いものである。

ごめんごめん、そんなに頑張ってくれるのだとは知らなかった。葉も花も姿が地味すぎてどこに蕾がついているのかすら気づいておらず、本当に完全な不意打ちだったのだ。

 

かわいいからちょっと部屋に挿しておこうかと、ひと茎切って下の方の葉を払うと、大変に良い香りが立つ。そうそう、黙って見てるだけではほとんど忘れてしまうが、刺激を与えると私好みの香りがするハーブなのだ。虫除けになるというし、このまま着々と増えるならば、夏の間などは部屋に飾ったあとの最後もゴミ箱の匂い消しとして活躍してくれるかもしれないではないか。

あまりにもわっさわっさと活発で可愛いので、急激にローズマリーに対する愛着が増す。植物でも動物でも映画でも「やけに活発」というのは、たいへん愛嬌のあるものだ。

 

その昔読んだ小説『風と共に去りぬ』の中では稀代のプレイボーイ、レット・バトラーの妹の名前がローズマリーだった。

たぶん一箇所、しかも名前しか出てこない人物なのに私が何十年もしぶとくその人を覚えていた理由は

「”ローズ”だけでも、”マリー”だけでも、名前として成立するはずなのにそれが2つも重ねてあるなんてなんてゴージャスなっ!」

と、わけのわからない憧憬を覚えたせいである。さぞさぞ、豪華な花の名前を冠された女性なのだと思っていた。

今、見るたびにぽつぽつと小さな花の増えつつあるローズマリーに水をやりながら思うのは「こんなに地味で地べたに張り付くみたいに咲く花の名前をつけられた妹って、またずいぶん興味深いな」ということだ。たぶん「華やかであれ」と願ってつけられた名前ではなかったろう。

はじめまして、レット・バトラーの妹。長いお付き合いになれると嬉しいです。

と、水やりのやかん片手に空想の友達を一人作るベランダ。

 

 

今となっては注釈を付けずには出版できないほど人種差別と帝国主義思想に満ちた物語ではあるけれど、子どものころはまったく疑問を持たずに読んだものです。なんとなく「アメリカすげー。西洋の美男美女すげー」という迫力に満ちていた。

 

今日の猫ちゃん


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今週のお題「懐かしいもの」