晴天の霹靂

びっくりしました

猫をこねる人

突然、猫が大騒ぎして

「こっち来てみって。すごいから。いいから早く」

と、わざざわざ小走りで呼びにくるので用事を置いて黙ってついていくと、猫は隣の部屋まで急ぎ駆け込み、秋らしい角度で差し込んでくる柔らかいひだまりの中に唐突にばたっと倒れる。

こちらの都合を無視して緊急招集した挙げ句、ご丁寧にお気に入りの場所まで指定しての、傍若無人な撫でろ要求である。

ここまで色々なことをいっぺんに要求される筋合いが果たしてあるのだろうか、という疑いをいだきつつ、さりとてやぶさかでもないので腹のあたりをコネコネと撫で回していると、猫は寝たまま爪をカーペットに引っ掛けて背中でひだまりの中を水平移動する。

我が家の猫はなぜか寝たまま爪の力でずるずるくねくねと前進していくのが好きなのだけど、黒光りする体毛だけになんとなくうなぎの散歩みたいで、やや不気味でもある。

「なにそれ、動くならちゃんと立って歩きなさい」

私も腹毛をもしゃもしゃし続けながら、適当な説教をする。

まあ、いいからいいから。もうちょっと撫でていきなさい。猫はごろごろと答える。

秋の日差しの中で、ダダをこねる猫。猫をこねる人。

 

 

今週のお題「急に寒いやん」