昼前のひだまりの中で猫が立ち寝をしている。
正確に窓の形を切り取って伸びてきた秋の太陽の中に、黒猫はちんまりと座って、そのままゆっくり目が細くなっていく。
「子猫がよくする眠り方だけど、うちの子の立ち寝は久しぶりに見るな」
とオムレツ食べてる手を止めたら、気配に気づいた猫がぱちっと目を開ける。
そうしてまた、うっすらうっすら閉じていく。
夢とうつつの境目をたゆたうのが、一番気持ちがいいのだろう。
食事を終わって皿を洗って、また見たら今度は光の長方形の中にぴったり収まって猫らしく寝ている。
黒い毛並みはいかにもホカホカとしており、実はこの子は斬新な形状の充電池なのかもしれない。
夏は高温を避けて部屋のあちこちでぐでんぐでんと伸び切っていたものだけど、この季節にプレゼントのように差し出される日向は、ありがたくって大事に取っておきたい気持ちになるもんだ。
そうやって蓄熱した太陽は、冬の寒い日にちょっとずつ取り出して使えるといいね。
パソコンの前に移動すると生意気に「あー、忙しい忙しい」という感じでついてきてイソイソと膝に乗る。
やんわりした重みと暖かさを含んだ毛並みをなでながら、パソコンは放置して秋の澄んだ青空を見上げる。
秋の午後なんか、猫を撫でているだけで一瞬で終わってしまう。