北国育ちゆえ「お盆過ぎたら秋」と思って生きてきたものだけど、今年はお盆過ぎて連続真夏日記録が34日目になったらしい。
何十年も前のことを言っても詮無いが、子どもの頃は30度超えると物珍しくてテンション上がったものなのだ。
そして私が住んでいるのはそういう時代に建てられた住宅である。暑い。
何よりもまず部屋にいる猫に申しわけなくて、自力であちこちと涼しいところを探して移動しながら眠っている猫を時々覗きに行っては「だいじょうぶ?」と声をかけて泰平の眠りをさまし顰蹙を買う。
ペット用ひんやりマットも、冷凍チュールも、アイスノンも、冷凍ペットボトルも、全部拒否された以上、飼い主はただ気を揉むばかりだが、日差しの変化やら風通しの変化やらに関しては人よりずっと詳しく、思いのほか元気に暮らしてはいる。
スイカを買ってくる。
「お盆過ぎたらスイカの値が下がる」というのも、ずいぶん長い間疑わずにきたものだけど、こう暑いとまだ旬でもあり、値段は下がらない。
そうかといっていつまでも冷凍したカルピス牛乳割りばかり食べ続けるわけにもいかないので、ちょっと高いなあ、などと思いながら買ってくる。
大きいタッパーに入るだけは、キューブ状にカットして冷凍し、あとはすぐ食べるぶんと冷蔵庫保存。
「スイカに塩」というちょい足しも、昔はなんだかわからなかったが、こう暑くなってくると、単純に塩分がうまくなることがわかる。
そのまま食べたり、塩をかけたり、ポッカレモンをかけたり、凍らせたり。
連続真夏日記録が終わるまで、もうスイカだけでいいんじゃないかな、という気持ちなぞにもなりつつカブトムシくらい夢中になってうまいうまい。
スイカを買った帰り道、ちょっと小さな脇道に入ると、いつも道路に面したガレージの中でタバコを吸ってる初老男性が居る。
最初は車の整備かと思っていたが、気づけばいつもいるし、いつもタバコを吸っているだけである。
うちの猫と同じで、たぶんあそこが涼しくて、つまり彼の居場所なのだろう。
心密かに「グラントリノ」と名前を献上。
向こうは向こうで、そのうち私をこっそり「スイカ」と呼ぶようになるのであろうか。