『エルピス—希望、あるいは災い—』が、毎週毎回面白いですね。
最初の頃は政権から報道に圧力かけられてメディアも大変、という話かと思ってみていました。
それにしたって安倍一強政権下では絶対に放送されなかった話でしょうから大変興味深く見ていたものです。
回を追うごとに予想を超えてどんどん話が大きくなっていくにつれて「これはどうなることか?」と思いはじめたあたりでエンドクレジットに参考文献が9冊も明記される珍しいドラマだということに気づきます。
参考文献を見るにモチーフになっている事件はいくつかあります。
この中で、「足利事件」は聞き覚えがありました。
殺人で服役していた無期懲役囚がDNA再鑑定で不一致が判明し一転無罪になったというとんでもない事件で、たぶん2009年の釈放の際の報道で私はうっすら記憶していたのでしょう。
もうひとつのほうは聞き覚えがなかったので、この文献の羅列の中から「飯塚事件」に関する一冊を読んでみました。
飯塚事件というのがまた足利事件に輪をかけてとりかえしのつかない事件で、こういう表現には語弊しかないのだけど、一気に最後まで読まされるおもしろさでした。
足利事件と同じずさんな手法によるDNA鑑定方法を根拠に殺人で有罪にされた被疑者が、判決からわずか二年ほど、まるで足利事件再審を見て慌てて証拠隠滅を図るかのようなタイミングで死刑を執行されてしまった。
要は無実の人を国家権力が殺した可能性が極めて高い事件です。
もちろんドラマはフィクションであり、いろんなモチーフがあるので「この事件のこの人がドラマのこの人だな」と断定するような、そんな単純な一対一の構造で描かれていないのはもちろんのことです。
とはいえ、見てればどうしても気になるのは、私が読んだルポルタージュには登場しないが、ドラマにはずっとチラチラと出てきているマフィアルックで態度がでかく口の曲がった副総理の存在。
滑稽なほど「あの人ですよね?」とわかりやすいカリカチュアで出てきているので毎回気になるのです。
全10話前後と思われるドラマが7話まで放送されたあたりで、ある時ふと魔が差してスマホで「麻生太郎」と検索してみました。
……つい、長澤まさみみたいな顔になる。
この腹のすわった面白いドラマが無事、最後まで放送されますように。
このNHKのドキュメンタリーも大変面白かったです。