晴天の霹靂

びっくりしました

朝顔のたくらみ

ベランダに朝顔が咲いている。

7月のベランダにとって朝顔が咲くほど素晴らしいことは、なかなかないように思われる。

たったひとつのプランターに種を一袋全部蒔いてしまったせいでツル同士はぐるんぐるんに絡まり合ってしめ縄の様相を呈しているし、栄養不足のためか花も少なく小さい。

しかし、どれほどささやかであっても夏に朝顔が咲くのはこの世の最高の出来事のうちのひとつと言える。

 

冷たい麦茶を片手に、無印頑丈ボックスに座って盛夏の花見をする。

今朝の花はみっつ。全部向こうを向いて。

太陽に向かって伸びていく性質のせいなのだろうか、咲いても咲いても、花はつねに外を向いており、私は毎日花の後頭部ばかり見ながら茶を飲んでいるのである。

もちろん、花が咲いている事実が尊いのであって、どっちを向いていてもそれによって価値が毀損されるとは思わない。

思わないのだが、声をかけてもいっこうに振り向かないところは、どうもうちの猫に似てる。

冷たくされるくらいのほうが、尊さが募るものであろうか。

 

迷子になっているツルをベランダの手すりの方に寄せて軽く絡ませておく。

こうしておくと夕方にはもう手すりの高さの半分ほどまで登ってしまうのだから、ある意味運動神経は猫より優れてもいる。

上へ上へ、ちょっとでも太陽に近いほうに近い方にまっしぐら登っていって、手すりの中に自分を閉じ込めて満足する私のほうには見向きもしない。

ラクラとする7月の日差しの中で、朝顔の後頭部は宣言する。

こことは違う世界があらまし。