晴天の霹靂

びっくりしました

総裁選読書祭りvol.2 ~石破氏、野田氏

総裁選読書祭りvol2です。

 

rokusuke7korobi.hatenablog.com

 

 

今回読んだのは、たぶん政治家としてもっとも著作の多い部類であろうと思われる候補者候補(?)の石破茂氏と野田聖子氏です。

今回の総裁選挙に向けて改めて出版された著作でこそないけども、たくさんある中から最新の単著を選んでみた。

 

石破茂

政策を勉強したり語ったりするのがいかにも好きそうで、熱量のせいで面白い部分が多いのだけど、とりわけ盛り上がるのは「モリカケ問題」のくだり。

筆致が非常に熱いのです。

石破さんいわく、

 

安倍さんともあろう人が、野党やマスコミが言うような権力を利用した利益供与などするはずがない。

もともと国会議員のところにはいろんな人が来て陳情をするが、それはどういうことに困ってる人がどこにどれくらいいるのかを知るための大切な仕事。

それで個別の利益誘導なんて一年生議員でもやらないようなバカなことを、安倍首相ほどの人がするわけがない。

これについては、きちんとわかってもらえるまで説明を尽くすしかなく、こんなことを言うと「総理を後ろから撃っている」などと批判する人がいるがとんでもない話。

いくら説明してもわかってもらえないと、うんざりする気持ちは自分にもよくわかるが、ここは夫人でも国税庁長官でも、ちゃんと呼んできて「もういいです」って言われるまで説明を尽くすことこそが安倍さんを守ることに繋がるのだ。

 

……と、いうようなことを滔々と書いてあるんです。

どんな狸みたいな顔してニコニコ書いたんだろうと想像すると楽しくてここだけ何度も読み返してしまいました。怖いよお。

 

他に、あえて国防以外のところで面白かった点をあげると、国会の与党質問のことに触れてるのも、積年の疑問が解かれた部分でした。

国会には、与党質問でさんざん総理や大臣をヨイショした挙げ句に「この点について総理の決意をお聞かせください」と繋いで、誰も興味ない自慢話を引き出すミニコーナーがありますね。

あの寸劇が、いったい何を見せられているのか本当に不思議だったんです。

石破さん言うには、あれは質問の仕方が悪いのであると。

与党質問というのは「野党から必ず聞かれることを先回りして聞き、論点を明確化する」ための時間。

なるほど、「ごますり解禁ボーナスタイム」として設定してあるのではなかったんだと、ようやく合点がいったのでした。

変だなあと思ってたんだよな。

 

野田聖子

印象的だったのは、アベノミクス批判、新自由主義批判の部分です。

朝に夕に小泉構造改革竹中平蔵を恨むことでなんとか元気を出してきた氷河期世代としては、急に膝を正してしまうことです。

 

トリクルダウンなんて起こらないのだから、これからは個人や地方が力を伸ばすことで全体が活性化されることを目指さねばならぬ、と野田さんはいいます。

これをして「人材発、地方発の水系型モデル」って命名されると、急になんだかわからないものの、「トリクルダウンは重力方向が予想と逆だった」って意味なら、私も常々そんな気はしてたなあ、と思うところです。

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『みらいを、つかめ』より 「人材発、地方発の水系型モデル」イメージ

具体的にどうやったら下々が活性化するのか、が今ひとつよくわからないのではあるけれど、党要項で「自助、共助、公助」と記してある自民党(これは石破さんの本に書いてあった)において、

「現在、支え合いの意識が弱くなっているのは、政治が果たすべき役割を十分に果たしていないから」

と標榜する野田聖子さんみたいな政治家もいるのは、ぐっと議論の面白みが増すところです。

 

あとは、野田聖子さん自身が障害のあるお子さんを育てながらの議員活動、数少ない女性閣僚経験者という、いろんな当事者性を大事に活動している様子が綴られ、「国民との意思疎通の中でともに政策を考える」という基本姿勢が冒頭に宣言されているのも印象が強い。

 

何よりも、みんなが仰天したほど国民との意思疎通が苦手なせいで退陣に追い込まれた菅さんに代わるリーダー選び。

しかも「8年+1年」続いた安倍路線の次の手を決める選挙でもある。

当落は別にしても、現路線の総括と弱点の明確化のために、是非このタイミングでこそ出馬して、これまでと毛色の違う政策議論をしてもらったほうがより面白いのではないか。

ここはひとつ石破さんも、なんか迷惑がられながら河野さんを押すよりは、野田さん支持に回るというような具合にはいかないもんか。後ろからバズーカ持って。