どうも立候補者は3人に絞られてきたようだということで、賑やかになってるんだか地味になってるんだかよくわからない総裁選の読書祭りvol3です。
みんなでどれが勝ち馬なのかを計算しあって右往左往する様をあと二週間見続ける奇祭。面白いけどなんだこれ。
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高市早苗氏
17日の発売予定だったものが、予約しておいたら15日にはKindleに配本されていたのでちょっとびっくりしました。
2日前倒しで出版されたようです。
高市さんは本が出るのが一番遅かったぶん、早くから記者会見で政策発表はだいぶ熱心にしてるのでそちらの情報が先に入ってきてました。
会見自体が結構長いというので、まとめてあるのをちらっと見たら、経済政策で「給付付き税額控除」、とあったのが非常に印象に残りました。
なんとなく、良さげに聞こえるぞ。
さっそく目次から探してみると「『給付付き税額控除』の導入を」という短い章の中にその部分はありました。
低 所得 の 方 に対して は、 勤労 税額控除 で ある「 給付 付き 税額控除」 を 導入 し て 支援 し たい。 一定 額 を 下回る 所得 層 に対して 還付金 を 給付 する もの で、 税制 を 社会保障 に 活用 する ので、 行政 コスト も 安く 済む。
ベーシックインカム理論よりはるかにうまくいきそうに見える、そんな方法があるのか、と思ったもんですが、びっくりしたのがその次。
日本 経済 が 成長 軌道 に 乗れ ば、 将来 的 には、 所得税 課税最低限 の 引き下げ と セット で 所得 税率 を 一律 10% 程度 に する こと で、 所得 税収 総額 は 減らさ ず に、 各人 が 努力 し た だけ 報わ れる 税制 と する こと が 私 の 理想 だ。
こうなってくると、非課税かどうかギリギリの収入の人には、生活がましになるのか、やっと暮らせていたものがついに暮らせなくなってしまうのか、非常に微妙な線に置かれそうにも思える。
この抱き合わせ政策は「給付金付き税額控除」はおまけのトッピングで、むしろメインは「所得税率一律10%」の方ではないか?
立場によって受け止め方は色々あれど、私と孫正義が同じ税率になると言われて私が喜んでるようだったら流石にどうかしてる。
危ないとこだった。
さらにいえば、私は「勤勉」でも「誠実」でもないし、
「あの一家の血筋は126代も続いているのでありがたい」みたいなことは思ったこともないし、
誇りとか感謝は強要されたくないタイプであることから察して、
高市さんの定義上の「日本国民」でない可能性が高いのだ。
そうなると、私がなんらかの不慮の事態によって国家の保護が必要となる状況になっても、高市さんの視界にはまず入らないっぽいことがピンチである。
あと「首相の気に入る形で努力してるかどうか」をジャッジされ続ける立場になるのも、かなりしんどそう。
枝野幸男氏
自民党総裁選に出馬するわけではないけど、直後の衆院選のことまで考えると広義では首相候補の一人かもしれない枝野さん。
あえて高市さんと並べたい理由は、「給付付き税額控除制度」の話があるからだ。
高市さんと枝野さんが経済政策で一致するのってすごい、と思ってちょっと調べてみたら、もとは野田首相時代の民主党提出の案だった。
2012年時点では高市さんは「新たなバラマキ政策」として反対している。
税と社会保障の「3党合意」を急いだ党執行部 | 5期目だ!野党だ!!永田町通信 平成21年10月~平成24年12月 | コラム | 高市早苗(たかいちさなえ)
「「弱者のフリ」をして負担を逃れる人が増える可能性もあり、勤勉に働いて真面目に税や社会保険料の負担をしている多くの方々のモチベーションを損ねることになりかねません」
と感じていた政策を、高市さんが今取り入れるようになったポイントが「一律所得税10パセーントにすれば公平性が保たれる」ということなのだろう。
一方の『枝野ビジョン』の中では、この制度は事実上の「消費税額事前還付付き制度」であるとする。
「健康 で 文化的 な 最低限度 の 生活( 憲法 二 五条)」 を 営む 上 で 必要 な 消費 額 の 一 〇% を、 すべて の 居住 者 に 事前 に 給付 し て しまう。 所得税 を 納め て いる 方 について は、 その 金額 分 を 税額控除 し て 減税 する( 所得税 減税 分 では 前述 の 一 〇% 分 に 足り ない 場合 は 残額 を 現金 給付 する)。 高額 所得 者 には 所得税 の 増税 を 組み合わせる こと で、 支援 対象 を 中低 所得 者 に 集中 し、 逆進性 対策 の 効果 を 高める。 複雑 な 複数 税率 などに し なく ても、 そして、 高額 所得 者 が 金額 的 には 大きな 恩恵 を 受ける 消費税 そのもの の 減税 や 廃止 よりも、 所得 の ない 方 や 少ない 方 にとって、 大きな 効果 を もたらす こと に なる。
消費税分を還付すると同時に、高額所得者に対する増税と組み合わせて逆進性を緩和しようとする方法として提案されている。
導入の意図が、高市さんと逆なのが興味深く、「給付付き税額控除制度」とだけ聞いて漠然と私がイメージしたものはこちらの意図に近いものだったのだ。
ニュースなどで政策比較一覧表などをみかけると、高市さんのところは「給付付き税額控除制度」とだけ書いてあることがあって、なんとなくこの枝野路線で理解してしまいがちな雰囲気になるので、やっぱりちゃんと読んどいた方がいいもんだ。
枝野さんは、最近も政策発表の会見のたびに「センスがいまひとつではないか?」というような声をネットあたりで観測するのだけど、この本を読んだ感じもちょっと近いところがある。
「色々良いこと書いていたような気がするんだけど、要するになんだっけ」
みたいな感じになってしまいがちなところが、非常に枝野さんだった。