なにやら政権与党の方で祭りをやっているらしいので、昨今はその読書週間を開催しております。
まずはこの機会に出版された3冊。
岸田文雄氏
東大受験に3回失敗したエピソードが味わい深い。
身近な友人や親族に東大出身者が多いんですって。
とくに親族の男性はほとんどが東大から官僚、というルートを通っているので
「自分も自然にしてればそうなるんだろう」
と思っていた、と。
それで高校生活、野球部で活躍し、ギターも弾いてご機嫌に青春をエンジョイしていたら一回目の受験に失敗。
まわりの知り合いたちはみんなそんなに無茶苦茶勉強してるふうでもなく、普通に生活して普通に東大に入っていくのに「おかしいなあ」とか思いつつ、翌年も挑戦、落第。
さすがに3回目はちょっと心配になってきて東大以外にも早稲田と慶応を受けたら早稲田だけ受かった、という経緯が、屈託なく書いてあるのがいいんです。
落ちても落ちても「あれれ、普通にしてたら受かると思うんだけどおかしいなあ」と首をひねってる十代の岸田青年の感じが、
「普通にしてたら総理にしてもらえるハズなんだけどおかしいなあ」
という感じでキングメーカーの後ろで首をひねってる姿を彷彿とさせて、結構いい話だと思ってしまった。
世が世なら。支える構造がしっかりしてる時代なら、こういう中空型のリーダーって本来は日本人の気質にあってたりもするんじゃないかなんて思ってみたり。
河野太郎氏
いろんな方面に尖ったことを言うことが得意だから、野党に居たら仕事をするのではないか、っていう感じがした。
ワクチン担当大臣として見てた範囲では「尖ったことを発信するのは好きだけど実行できるかどうかにはあまり関心ない」って感じにうつったもんだけど、それら実績に関してはとくに総括されてないこともあって、本を読んでも印象がほとんど変わらなかったな。
あと、かようにネットに色々書くと本人の目に触れて怒られて情報ブロックされそうで怖いという状況、あんまりよろしいことじゃない気はいたしますね。
下村博文氏
読んでびっくりスピリチュアルおじさん。
あまりのファンシーさに一人で「うそーん」などと奇声を発しつつ読んでしまうため、実はまだ最後まで読み終わってない、手強い一冊。
冒頭が、実は自分が9歳のとき交通事故で突然父親を失った交通遺児である、という話から始まるんです。
母と3人のまだ小さい息子はそれで大変な貧困状態に陥った、と。
見かねた民生委員の人がある日やってきて「生活保護を受けたらどうか」とアドバイスします。
母はそれを9歳の長男博文少年に相談。
親子二人で話し合って、「なんとか自活していこう。病気で倒れてどうしてもだめになったら、生活保護を受けようと決めた」んですって。
これを、今この時期、コロナ禍の中で行われる総裁選へ向けての提言集として出版される本の中の冒頭に、一種の美談としてのせた感覚もかなりビビりましたし、まわりも何もいわずにすーっと出版に至ってしまったんだ、という状況にも腰抜けました。
この後、博文少年が刻苦勉励して奨学金を受けたり新聞配達したりしながら進学して政治家になっていく様子が(引き続き美談として)書かれているわけです。
この話を、割引なしで書かれたまま信じるとして、まあそれだけ頑張ったなら「あんな苦労があるから今の俺があるんだ。七難八苦を与えたまえ」とか、言いたくなる気持ちはわかりますよ。
それが苦労人の面倒臭さだけど、さすがに個人としては責められない。
でも、「苦労人のおじさんの繰り言」としてちょっと嫌がられる程度のことと、「その意識を公然と振り回しつつ権力者になる」ってのは全然別の事じゃないですか。
今このご時世に「どうしてもだめになるまで生活保護を受けないことが美談」と信じてる人が首相になるようなことにはなりませんように、というのがかなり切な感想です。
あとは、秩父の農村にいったら縁側に座ってお茶飲んでる人が「精霊」に見えた、とか日本の土壌にはエネルギーがあるからかぼちゃがうまいとか言う話は、……まあ正直、ちょっとおもしろかった。
首相にはならずにおもしろスピリチュアルおじさんとしてちょっと周囲を困らせてる役でどうだろうか(今でも党三役だけど)
あとは高市早苗氏が15日に出るし、他の候補者はこの機会に新しく出版されるのかどうかよくわからないので、読める順に読んでキャッキャやっていこうかな、という感じです。
(高市早苗さん、なんかタイトルが怖い……)