砂ぼこりが舞い上がるのを防ぐために猫トイレスペースに小型空気清浄機を置いている。
細かい砂塵さえ吸ってくれればいいのでできるだけシンプルな機能、押し入れ一間分のスペースの空気をろ過できれば十分なので小型でとにかく安いものを、という基準で探した。
近頃Amazonでよく見かける、商品説明の日本語が怪しいうえに、レビューの星具合も怪しいタイプのものだ。このくらいの価格帯の空気清浄機だと詐欺レビューがついていないのを探すほうが難しい。
とはいえ、たいへんに限定的な我が家の使用目的にはばっちりで、ただ黙々と365日24時間猫と人間と家電を砂塵から守ってくれている。たまにフィルターを取り出して掃除機で吸うとびっしりと細かい砂がついているので、安物とはいえ導入して正解だったと実感する。そういえば、元来くしゃみが多かった虎猫も、いつの間にかあまりしなくなったのだ。出品方法はいかがわしいとは思うが、我が家にはないと困る。
ところが、である。導入から半年ほどたったある日、急にこの空気清浄機がピコーンピコーン言い出した。見るとどうやら「フィルターマーク」っぽいところが点滅している。フィルターは時々掃除機で吸っているし、砂塵さえ取れればいいと思っているだけなのでほとんど交換するつもりがないまま半年たったのだ。
だがしかし、このピコーンピコーンはどうやって黙らせるのか。我が家の平和を守っている彼に今M18星雲に帰られては大変に困る。
空気を周りから吸い込んで上から吐きだすだけの簡単な装置である。スイッチの類は何もついていない。タッチパネルで、風力の強弱を選べるのと、電源のオンオフができるだけだ。光っている「フィルターマーク」とおぼしきところを一応押してみたりもするがもちろんそこはボタンではない。フィルターを変えないかぎり、一生ピコーンピコーン鳴る部屋で暮らさなければならぬという商品なのかっ?
やむを得ない、とりあえず新品のフィルターを買った。それほど高いってものでもない。あまつさえ、半年に一回で2千円程度なんだからちゃんと買いかえて使うべきだったのかもしれない、と殊勝にも心を入れ替え始めたりしはじめた。思う壺だ。
ところが、手元に届いた新品のフィルターをセットしたところでピコーンピコーンは止まらない。
あたりまえだ。フィルターと、タッチパネルには一切電気的な接触もなく、要するにフィルターが新しかろうがふるかろうがタッチパネルのほうで感知しているわけがないのだ。
薄々気付いてはいたが、というかほぼ確信さえしていたが、ほかに一切知恵が浮かばなかったのでうっかり買い替えてしまった。おのれ、たばかったな薬缶頭。
販売サイトの商品説明の日本語からして怪しかったことからも押してしるべし、取扱説明書のようなものがついていた記憶もない。さてこれはどうしたものか、と途方にくれることしばし。
思いついたのは、この廉価版空気清浄機は、別にオリジナルの構造ではないだろう、ということだ。似たような形似たような値段の空気清浄機であればだいたい似たような設計になっていて、どれか使い方がわかればだいたい同じなのではないか。
ピコーンピコーン言う空気清浄機の隣に座り込んで、いろんな空気清浄機のフィルター交換について検索する。
読んでいるうちにちょっと思いついたタッチパネルの「フィルター交換マーク長押し」であっけなく音は消えたのである。
なかったわー、タッチパネルを長押しっていう概念はなかったわー。物理ボタンなら長押ししてみたかもしれないけど、タッチパネル長押しって思いつかなくない?っていうか普通に押してみたとき何もおこらなかったんだけど、何のためにわざわざ長押しにしてあるの?訳わからないヤツがうっかりフィルター買うため?……などなど、思う事は多々。
昔の家電って誰も読まないのにもれなく分厚い取扱説明書がついてきて邪魔、というのがお馴染みだったもんだが、昨今はまったく何の説明がないものが多い。とくに怪しげな家電をかうときは検索スキルがもれなく求められる時代になっているのであるなあ、と新たなる空気を吸い込みつつ実感した次第。