晴天の霹靂

びっくりしました

Netflix『メシア』シーズン1を見終わった 興奮のネタばれ

年明け早々、エライ勢いで夢中になったNetflixオリジナルドラマ『メシア』シーズン1全十話を見終わりました。あまりのことにネタバレをあまり気にせずに色々いいますが、何も知らずに見るほうがぜっちに面白いタイプのドラマなので、見る可能性のある人は読まないでもらいたい。

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 衝撃の結末でした。

ネタバレもなにも、まさかまさかの、「何も終わってねーっ」という。

いや、むしろ終わっているのかもしれない。いややっぱり、終わっていないだろ。


『メシア』シーズン1 予告編 - Netflix

イスラエル国境に大量のパレスチナ難民を連れてきて中東情勢を(というよりむしろもっぱらアメリカを)混乱に陥れた謎のカリスマ男が、次はアメリカに現れて田舎から都会までさらなる混乱を起こしてまわる。何が目的なんだ、何物なんだ、とCIAが追いかけまわす、というのがストーリーの柱なので、見ている側としては「詐欺師なのか、メシアなのか?」というところに興味を持ってしまうのですが、どうやらその点についてはあいまいなまま終わったようです。

 

一応はCIAの執念により、謎のカリスマ男の育ちやら本名やら、マジシャンだったことやら、どうも不穏当な思想家社会活動家とつながりがあることやら、背後にロシアの匂いがする、ということやらは嗅ぎつけて、いったんはなんとなく「詐欺師である」という方向で収束に向かってるように見えるのです。

とはいえ、CIAの調査もなんとなく踏み込み甘いし、マジシャンだった人なら宗教活動家ではありえないってのも理屈としてはそんなに良く分らないような気がするし、本当に単なる名もなきチンピラみたいな人ならどうやってロシアが探し出して、何のためにちょっとした国家の命運みたいなものまで託す必要があるんだ、とか。一個ずつはそれほど納得いく結果には到達してないのです。

 

じゃあ一部狂信的な人たちが信じたように何らかの宗教的指導者かっていうと、それにしても目的がわからない。気まぐれでつぎつぎいろんなところでいろんな厄介ごとを起こしては、その場にいる不満のある若者に行き当たりばったりに責任をおっかぶせて「君は光に包まれてるから頑張れよ」とか言って逃げるのはなんなんだ。

しかも、リアル「炎上商法」を狙ってるだけのチンピラにしては、今のところあまり得してる様子はないので規模が壮大すぎてコストが割に合っていない。

 

きわめつけに最後はイスラエルに送還されるのに彼の乗った飛行機が砂漠に墜落するのですが、なんと飛行機は落ちたのに彼は生きており、彼以外の乗員も彼が手を当てることによって生き返った…?と思われるたいへん美しい光景で終わるわけです。

ところがこの墜落現場がみたところどうやらケシの花畑のようであり、ということはこの映像は誰かの幻覚である可能性というようなことを考えざるをえない。じゃあどこからどこまでが誰の幻覚なんだよ、と考えるとなにひとつわからなくなって第一シーズン終了。どうしてくれるんだ。

 

こっちはそのつもりで見ているのだから、話は1シーズンで一区切りつくように作ってくれなくては困るではないか、など思いはするものの、やっぱり好きな話であって早くも二周目を見始めてしまっているのです。

 

ひとつには私がもともと、よそ者にはなかなか理解できない砂漠生まれの唯一神にまつわる話が好きだっていう理由があるのでしょう。さらには、このドラマにおけるメシア役のキモくて魅力的でもあるルックがすごくてとにかく注視してしまうということもあります。

そして「全然理屈通ってないじゃん!」というドラマ全体を通しての感想が聖書なりイスラムの経典なりを読むときに感じるモヤモヤを想起させられて、ちょっと気持ちがいいっていうのがあります。

あるいは、理屈には合わないけど圧倒的な説得力の前でただ心が揺れ動く、という経験がしたいのかもしれない。

 

なぜ1シーズンできちんと決着をつけられないんだ。そしてあまり触れられていないサイドストーリーの種ばかりまき散らしながら進むんだ。話として全然閉じていないのに、ついついまた見てしまうではないか。