晴天の霹靂

びっくりしました

大掃除をめぐる攻防 ~おのおのが、おのおのの仕事を。

年末の大掃除の進捗はいかがですか。

いいのです、いいのです。年末より少し心の憂さが減っていればそれだけでもう気分は新たになっているのだから、「ずっと気がかりだったこと」がひとつ減らせれば充分なのです。などとはいきなりどの立場から誰に話しかけているのか。

 

年末なのでカーペットを180度回転させました。

声に出すと地味だけど、実際やると面倒な作業、それが「カーペットをぐるぐる回しながら使うことによって傷や汚れの一極集中を押さえ、極力長持ちさせる秘技」。

 

 

いったんふすまを外して、机を出し、キャットタワーも隣の部屋へ引きずっていき、カーペットをはがして半回転させる。

おっと、自分の足が邪魔で位置の微調整できないではないか。仕方ないので押し入れに潜りこんでそこからひっぱたり押したりして調整をしていると、案の定猫が乗る。

ああよしよし、ほーらいいものあげますよー。いったん手を休めて隣の部屋へ行きこれみよがしに餌皿にカリカリを満たせば、カラカラ言う音に引かれて猫はいっせいに走り寄る。ああ畜生の浅ましさ、お前たちの妨害行為をかわすなど人類の英知をもってすれば赤子の手をひねるようなものよ、とつぶやいて今度は一人でカーペットを完璧な位置に敷きなおす。

 

よし完璧と、机を戻し、ふすまを戻し、さてお次はキャットタワーと見れば餌を食べ終わって満足した猫が二匹、ココナッツの実のように丸くなってそこに実っている。たわわなる黒い実とグレーの実。

「仮置き、仮置き。見ればわかるでしょう。作業してるからここにちょっと置いてあるだけですぐ元の場所に戻すんだからお前たちがここに乗ったら邪魔になるんじゃないかな、って思わなかった?」

顔を近づけて責め立てれば、猫っていうやつは飼い主を困らせることが仕事と心得ているから上機嫌、飼い主の方も本音を言うと困らせていただくために飼っているようなところがあって、ついつい耳の裏をかいてやったりして遊んでしまう。

 

ふと振り返って我にかえればいかんいかん、こんな部屋のど真ん中にタワーがあっては今後一生ドアの開閉すらままならない。どこまでも長くのびる猫を引っ張って次々に抱き下ろし、元の場所にタワーを戻す。タワーが壁紙にこすれて傷がつきそうなところには養生テープを貼っておく。

 

だいたい部屋が元通りになったところで、机やキャットタワーを仮置きするために隅っこにずらしていたこたつを元の場所に戻す。すると、中から非難がましい顔をした猫がまた出てくる。さっきまでキャットタワーのところでうろうろしてたのに、なんで今ここでくつろいでるんだ、お前さんたち本当は何匹いるの。

 

猫はどういうわけか大掃除が好きだ。引っ越しはあまり好きじゃないらしいが、大掃除と引っ越しの差はちゃんとわかっていて、掃除である限りははしゃいでおり、先手先手を取って邪魔しに来る。毎年毎年、ずっとそうだ。

 

他にもせねばならぬ仕事はあるから、今日のところはこれまで。だいたい片付いたところで切り上げていつも通り机に向かえば、遊びも一段落と踏んだ猫たちはまた、お年玉として鰹節を袋ごともらう夢などを見るためにそれぞれこたつへ戻っていく。

大掃除より、遊びが大事。