この時期になると「大掃除を楽にするグッズはコレ!」というような小ネタがあちこちに氾濫します。やれ古歯ブラシだ、オキシクリーンだ、重曹だ、メラミンスポンジだ、と色々あるわけですが、実はまだ世間が見落としているものがあることを私は知っています。
隅っこの歯ブラシも入らないところの汚れとか、サーキュレーターの羽根の奥軸のあたりでからまった埃を取ったりとか、ネジとか電気プラグの穴に入り込んだ埃をとるにはこれしかないでしょう。むしろなぜ誰も師走になったら一家に一本エアダスターを買うことを勧めないのか。
とはいえエアダスターも、おうち掃除用に開発されたさまざまなグッズに比べて問題もあるのは、ちょっと大規模な掃除を初めてしまうと、連射している間に缶の気圧がどんどんさがってあっと言う間に冷え、どうかすると表面にうっすら霜までつくという、この季節にはやや辛い現象が起き勝ちなのです。
私は、今年ついにこの問題に対する解決法をも、発見してしまいました。
サーキュレイターを分解し、間に絡んだ埃を撃退します。「ぷしゅっとやってふわっ」「ぷしゅっとやってふわっ」のリズムに合わせて『アナと雪の女王』ごっこをやるべきだったのです。
埃に狙いを定めてぷしゅっとやると、舞ったほこりが師走の引き締まった光にふわっ。 そしてBGMの進行ととともに加速度的に掃除を進めていき、気圧がさがりきってもうガスがでなくなり霜がうすくはって手がかじかんできたところで厳かに缶を置いてつぶやくのです。
「少しも寒くないわ」。
こんなに無敵感の出る掃除はない。
馬鹿にするなかれ、映画のワンシーンのこういう反芻の仕方ってある種の発見もあるのです。
5年前の公開時に劇場に見にいったときは、あまりの人気にちょっと逆張りの意識が働いたこともあり「よくできてるけどそんなに記録的ヒットするほどのこともないだろう」と思ったのです。
ほとぼりも覚めた今エアダスター振り回しながら改めて「ありのままで」のシーンを見ると、魅力的だし、ちゃんとエルサが悪い顔してるところがすごくいいな、と思います。
「そうそう、そういえば雪の女王って怖くて悪い人だもんね」っていう根本の魅力がこのシーンにはしっかりあるのがよくて、キンキンに冷えたエアダスターにもよく合います。プシュッとやると、埃がふわっに合わせて、猫がさーっと逃げるところもまた、雪と氷の魔法無双感をかもしだしてくれる、冬ならではのお掃除の楽しみ。
なんだかよくわからないけど優柔不断な男の子をたださらってきちゃうアンデルセンの「雪の女王」のお話し、好きなんです。
リア充気に入らないという理由で誘拐する雪の女王も、ただ独占欲で助けに行ちゃう少女ゲルダも魅力的なんだけど、肝心の少年カイ君の影が薄い。「待って、冷静に考えて。そんなに取り合うほどいいか?」という感想を抱きがちな狩野 英孝みたいな話。