晴天の霹靂

びっくりしました

年末年始おすすめ本『百一 hyakuichi』

何年前だったか、手帳を買ったときにおまけで小さな百人一首がついてきた。

「そういえば、どのくらい覚えてるものかな」

と思って、アレクサにランダムで読み上げさせつつ一人で札を取ってみたのだ。中学校なんかで参考書として買わされる「国語便覧」がずいぶん好きで百人一首の項目なども含めて熱心に読んでいたものだが、いざ取ってみると自分で思ってるより全然覚えていないのだった。

これは、おもしろいから毎年やろう。ということで、アレクサを相手に百人一首を取るようになった。正月から一人で何やってんの、と言われても私にはこれが面白いんだから仕方ないのだ。

ただ取っているだけでは当然、毎年同じ札しか取れないし、取れる数も毎年変わらない。そんな中、正月からふらっとでかけた本屋さんでみかけたのが『百一』という面白い本?イラスト集?言葉遊び集?なのである。

百人一首は、ようするに上の5文字と下の7文字さえ覚えてしまえば取れるので、思い切ってその12文字だけ並べてしまおう、そしてそこから見立てと連想で一コマ漫画を描いてイメージでその12文字の世界を作ってしまおうという、ものすごく面白い作品集だ。

本来は直接は繋がらないはずの5文字と7文字が、ほぼ奇跡的に完璧な世界観をつくりあげている歌もあるし、「かなり無理がありすぎて」むしろ記憶に残る歌もある。

 

見れば見るほど、31文字からいったん意味を引っこ抜いても、5,7のリズム感だけで詩として成立しうる言葉の強靭さには感動するし、成立してなくもあれとこれを見立てこう補えば新しい世界になるという見立ての文化の汎用性にも舌を巻く。厳密には理屈は通らなくても、綿菓子のようにふわっと成立して印象に残る小さい宇宙である。

 

ちなみに今年私が気に入った奇跡。

 

嵐吹く三室の山のもみぢ葉は 竜田の川の錦なりけり

(現代語訳)嵐が吹き下ろして、三室山のもみじの葉が山すその竜田川を錦のように彩ったよ。

 

こういう「はあ、そうですか」としか言いようのない歌というのはいったい何が楽しいのであろうか、と私は思い続けてきたものであったが、これを上下12文字だけ抜き出して、天才イラストレーターの想像力を補うとすごい宇宙が隠れていたことが発見されてしまう。

 

あら至福 竜田の皮の

いや、良い歌だね。表向きは、知らない山から知らない川に紅葉が散ったっていう写生だけど、その中にしみじみ竜田揚げ食べて感無量になってる女性が居ると思うと、なかなか、つまんない歌どころではない。揚げたての、皮のカリカリのところね。

 

換骨奪胎してもまだまだ四方八方に世界が広がって行きうる、というのはやっぱり多くの人と時間を費やして積み上げてきた言葉そのものの力なんであろう。立身出世のために短歌作るのも今や不思議だし、短歌作るために恋愛するのも現代人には不思議な感覚だが、そこまでして作り出したデータベースだけのことはあるんじゃないか、と1ページめくるたびに衝撃を受けるのである。こんなに面白かったのか。

今更「暗記しよう」という思いがあるわけでもないのだけど、何かほんとうに言葉と戯れている感じのする、宝箱みたいな一冊である。

今年は何枚か、余計に取れるようになっているかもしれない。

 

 

2023年12月30日おせちの陣 戦歴

  • 黒豆 味見 完成
  • 角煮 上下返して火入れ 完成
  • 筑前煮 煮はじめ
  • 栗きんとん 完成
  • ロールチキン用のごぼう・にんじんの下茹で

目が覚めたらいきなり左手首が痛くて「こんなんで里芋の皮が剝けるかっ!」と一瞬思ったのだけど、動いているうちにまあまあ治った。寝返り打った拍子に抱きまくらをどこかへ飛ばし、持て余した左手を足の間に挟んで寝ているうちに自分で関節技を決めた(ような気がする)どうしてそうなった。