『首』を観てきましたよ。
予告映像ではまったく観たい気持ちが起きなかったのでスルーするつもりでいたのです。それが、別の映画を観に行ったら満席で入れなかったために、上映時間のタイミング的にうっかり観る羽目になった、という流れでした。
とはいえ、観てよかったです。思っていたよりだいぶ面白かった。とくに後半「こういうタイプのコメディなのか」ということが飲み込めてからは結構楽しく観ました。
テレビも持ってないので近年では北野武という人を観る機会も殆どないんですが、そのせいもあってか、かえって「オーソリティとお笑いという一番食い合わせちゃいけないところ食い合わせてる超胡散臭い老人」という猜疑心だけをなんとなく持ち続けてきています。
そのうえまた時代劇なんか撮っちゃってヤダヤダ、とか思ってたら、戦国武将としては明らかに不自然なくらいおじいちゃんなままの本人が出てきて、後ろで見苦しく糸引いてまわったり、無理に神輿に載せられてゲロはいたりしてたので「あ、自分の立ち位置分かってやってるんですね、すいません」とそこでちょっと和解。
北野武と浅野忠信と大森南朋と、三馬鹿が並んで出てくるとわかりやすくコントになるんですが、武の両脇の二人がどうも素で笑ってるあたり、この人ふざけてるところを近くで見ると本当におかしいんだろうなあ、と伝わってきます。それなら乗せられた神輿に乗っておくというのも、覚悟なのかなあ、と。
あの三人のシーンは本当にいいですね。
コメディ映画だということがわかると明智光秀の陰気なだけで全然おもしろくもない芝居なんかかもじわじと効いてくるんですが、最初から最後までずっと叫んでるだけでほとんどセリフが聞き取れない織田信長は、ちょっとなんだか分からなかった。いくら信長でも叫ぶ必要のないときは普通に喋ってたんじゃないだろうか。
全体のトーンが揃ってないことに、しばらく戸惑ってみてはいるものの、「戦国時代劇のフォーマットを使ってコメディをやりたいのか」ということが分かったあとは面白くは観ました。ひょっとしたら何年か経ってから余裕を持って見返したら、戸惑いも消えてもっと面白いのかもしれない。
気が向いたら読んでみてもいいなと思いました。この「首」という文字、タイトルで出るんですが、めっちゃかっこよかったです。