晴天の霹靂

上品な歩き方とかを習得できないまま人生を折り返すとは

ある猛暑の日

家電量販店に行ったので、なんとなくぐるりと見て回ったらいかにも不自然に2,3列、ほぼ空っぽの陳列棚がある。

こんなお盆時期に棚を空にするような商品入れ替えなどするものかね、と思ってジロジロ見ていたら、そこはどうやら扇風機のコーナーで、全部売れてしまって在庫がないだけなのだ。

「暑い暑いとは思っていたが、みんなも暑いんだな」

と、いくばくかの連帯感を抱いて何も置いてない棚の周りをぐるぐると見回ってきた。

皆様、暑い中生存ご苦労様です。

 

帰宅後、最大風量でずっと稼働し続けているサーキュレーターに、吹き流しをつける。

たまたま郵便受けに入っていた市の広報をハサミで細く裂いてセロハンテープでペタリと正面に貼ると、さすが大風量サーキュレーターだけあって実に景気よくピロピロ泳ぐ。

この暑さのせいでめっきり遊ばなくなってぐったりしている猫に、夜涼しくなってからでもちょっと遊べばいい、と思って付けたのだが、彼女はだいたいこの手の親心にはえらく冷たい。

私などよりだいぶプライドが高いので、なんであれわざとらしいことをされるととりあえず知らん顔をするのだ。

仕方ないので、吹き流しに向かって左右からビンタを張ったりして、飼い主、率先して遊ぶ。

猫、動じない。

 

夜間も暑くて窓を閉めていられないので、少し前にネットなどで話題だった虫除けを買った。

よく出来たトンボの模型で、効くの効かないの、という噂が色々あるのを聞いて面白がっていたら、近所のイオンで普通に売っているのを見つけてうっかり買ってしまった。

「虫だって視覚で天敵を認識してるとは限らないんじゃないのお」

と、笑っていたものだが、それにしたって「こんなんで効いたらいいな」という夢にはちょっと抗いがたいものがある。

全開の窓にぶら下げておいた体感としては、控えめに言って効いてるのかどうかよくわからないし、率直に言うとたぶん効いてない。

しかしながら、なんとなくカラッと開け放した夏の窓にオニヤンマがぶら下がってる様子はいささか夏休み感があって風流のためと思えば悪くはなく、なんとなくちょっと風鈴代わりのように愛でられなくもない。

 

「このオニヤンマ、吹き流しの先端につけて飛ばしたら猫遊ばないかなあ」

性懲りもなく、色々考えもするが、夏の猫は暑いからそっとしといてほしいのだ。

つれなくしないで、君と吾、二人で地球沸騰を乗り切っていこうよ。