『ビデオドローム 4K ディレクターズカット版』観てきました。
なんとなく混沌としていて面白かったです。
40年というだけあって、カメラの前にあるものしかフィルムに映らない時代に幻覚を映しだそうとする工夫の肉感が、今見ると結構可愛らしいもんですね。
「でもこれ、たしかに40年前は衝撃のグロだったに違いない」
と思うと、刺激は過剰になっていくばかり、というテーマの正しさに深くうなずきつつ観るところではあります。
40年前の世界がどんなだったかうっすらわかる側の人間として感慨深い深かったこととしては、メディアやらテクノロジーやらが更新されるたびに
「テレビばかり見てたら馬鹿になる」
「漫画ばかり読んでたら馬鹿になる」
「ゲームばかりやってたら馬鹿になる」
「パソコンばかりやってたら馬鹿になる」
「スマホばかりいじってたら馬鹿になる」
と毎回脅迫はされてきたわけです。
その結果、人類は相当馬鹿にはなってるのかもしれないんですが、人類全体で馬鹿になって、自分ひとりだけ正気を保ったとしたら、気が違ってる呼ばわりされるのは正気を保った人のほうですから、まあ難儀なことですね。
だいたい周囲と歩調を合わせて馬鹿になっていくより他にどういう方法があるのか。
とはいえ、「刺激は過剰になっていく一方」というのは手替え品替えして人生からなにかを搾取され続ける方法だから気をつけねばならぬのもまた確か。
さすがに「スナッフフィルム見てるうちに精神的におかしくなる」というとなんとなくそんなに一般的な感じがしませんが、「クソリプとヤフコメ読んでるうちにおかしくなる」となってくると、現代においていつもそこにある狂気です。
「うわっ、こんなに頭のおかしい人がいるのか。もっとひどいコメントもあるに違いない」
なんて酷いコメントを延々読み漁って気づいたら小一時間たってる現象って、社会問題について考えているのでもなんでもなく、より強い刺激を漁ってるだけに過ぎない単なるビデオドロームなわけで、これ軽く病気だな、って自覚はしといた方がいいやつですね。
あと、最近ピアスがかぶれてちょっと痒いので時々耳たぶをかきながら鑑賞してたら劇中でSMプレイの一環として耳たぶにまち針みたいのを刺し始めましてね。
「そういうんじゃないから今はやめてっ!」
って思ったもんです。