寒さのせいであんまり腰が痛いので、冬の季語に「腰痛」は入っているんだろうかと調べてみたところ角川の入門用の俳句歳時記には入っていなかった。
みんな、冬は腰が痛むものではないのか。
原因の半分くらいは布団に入ったときに寒がりな猫が足の上で寝るせいでもある。
夜中一旦起き上がってお手洗いに行くときなどは一旦猫をどけた後、もはや重力に抵抗する気力も出ず、四足歩行で部屋を横切ったりするわけだが、
「うわっ、人類のくせに気持ち悪い」
みたいな目つきでみられる。
君のせいで寝返りを十分に打てないから筋肉が硬直しているのだよ。
とは思うものの、こちらだってある日突然猫が二足歩行で部屋を横切って小用を足しにいったりしたらそれなりに白眼視するのであろうと思うと、致し方ないことなのかもしれない。
クキッとやって変な声を出さないように用心しいしい寒い中スーパーに行ったらサッカー台のところでおばあちゃんと孫と思われる二人連れがいる。
壁に貼ってあるプリペイドカードのポスターを見ながら孫が言った。
「ポイント1%だって。一万円買っても一円しかつかない」
たいていデビットカードで支払いをしてる私は隣でこっそり思った。
「へー、プリペイドカードってそんなもんなのかねえ」
孫は世の不正を暴くかのような決然とした声でもう一度きっぱり言った。
「一万円で一円だよ」
あれ?と思って慌てて心の中で一万円やら一円やらいろんなものを掛けたり割ったりしてみるが、孫の言う通りの結論にどうしても到達しない。
「1%のポイントってねえ」
良い声で何度も繰り返されると、小学二年生の頃から算数が苦手な私は「ひょっとしたら自分が?」という疑惑を抱いてしまうのだ。
いや、孫あんなに大きな声で繰り返してるし、おばあちゃん無言だし、私のほうが間違えてる可能性あるぞこれ。
そう思ってドキドキしながら耳をすますが、ついに誰からも異議申し立てはなかった。
ひとり荷物を抱えてスーパーの外に出て、息苦しいマスクを外しながら思わず普通に声が出る。
「いや、百円だろ」
ちなみに孫、大学生くらい。
おばあちゃんの買い物に付き合う好青年であった。
腰痛なのにすごく寒い中外出せねばならぬ日の神。
大殿筋のちょっと上あたり、冷やしては二度と帰ってこられなくなるおそれがあるからな。