晴天の霹靂

上品な歩き方とかを習得できないまま人生を折り返すとは

『二百十日』~風の厄日は遭難に注意

「いくら温暖化とは言えさすがにこの暑さは異常が過ぎるのではないか」

と思っていた猛暑から一転、夜が来て朝が来たらいきなり涼しくなっていた。

肩透かしに感じるほど一気に過ごしやすいが、それにしても雨は盛大に降っており、お出かけ日和になったわけでもないのだ。

 

暦をみれば、実に明日が二百十日である。

立春から数えて210日目は暴風雨が多いとされる雑節、というのは俳句の歳時記をよく読むようになってから知ったことだ。

暴風雨ってわけでもないけれど、たしかに気候はここを目印とするようにガラッと変わったなあ、と感心する。

 

暑さのせいで近頃ちょっとサボっていた買い物に久しぶりに出るが、濡らしたくないお米は買えないし、お線香を付けるのに使うチャッカマンも、なんとなく濡らすのが不安なので買わずにしまった。

お供えの花束だけはしっかり買って帰ってくると、湿気の多い部屋の中にたった一輪の薔薇の香りがしっとりと立ちこめて不相応なほど豪華な気分になる。

 

なんとなく忙しない夏だったけれど、こうやって薄衣を脱ぐようにして終わっていくものか。

久しぶりに涼しいのでご機嫌でまとわりついてくる黒猫の腹を撫でながら、ほんの少しだけ暑さを惜しむような気持ちも湧く。

二百十日は天候が変わりやすくて遭難しやすいから、気をつけなさいな」

二百十日・野分 (新潮文庫)
 

 

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迷い来て逃げぬとんぼよ君は誰