晴天の霹靂

びっくりしました

猫、冬の食欲

寒くなると猫の食事量が目に見えて増えるのは毎年のことだ。

日がな一日こたつに引きこもって寝ているのだから、夏以上のカロリーが必要になる道理もないと思うのだが、猫には猫の都合がある。

 

そもそも、猫が折に触れて餌をねだるのはレクリエーションの一種だと私は踏んでいる。

もちろん出された餌は食べるのだが、それ以上に人間になにかを指図したり、優しくしてもらったりすることそのものが生きがいなのだ。

だからこそ、普段は本来の食事の時間以外にねだられてもお付き合い程度の量しかやらないし、それで猫の方も納得して引き下がる。

 

それがこの寒波が来て以降の猫のねだり方の迫力がすごい。

餌置き場にあるちゃぶ台の下に潜り込んで天板の裏に頭をゴンゴン打ち付けながら「お腹すいたー」とやる。

猫は挨拶代わりにわりとカジュアルに色んなところに頭をぶつけたりするもんだが、それなりに頭蓋骨が骨らしい音を立てるので見てる方は毎回ハラハラする。

「やめなさい、やめなさい。ご飯は上げるから。ね」

と、なだめつつ、それでも彼女の健康を慮って控えめに皿に餌を落とす。

なにしろ、いそいで食べると胃袋が追いつかずに食後すぐそのまま吐いてしまう癖がある子なのだ。

少しの餌を、すぐに食べ終わってしまった猫はまた私を見ながらちゃぶ台の天板に頭蓋骨をゴンゴンやり始める。

「やめなさい。やめなさい。馬鹿になったらどうするの」

私は慌てて、猫の脅迫行為を止めるべく、また皿に少量の餌を落とす。

猫、食べ終わる。

再び、頭蓋骨をゴンゴン。

飼い主から餌をカツアゲするんじゃない。

やむなく、三度目の餌を皿に落とす。

猫、食べる。

 

餌皿の上に伏せられている扁平な頭頂部を見ながら言ってみる。

「にゃんこなのに、わんこそばなの」

「にゃんこなのに、わんこそばなの」

「ねえ。にゃんこなのに、わんこそばなの」

3回言ってやったが、もちろん無視される。

駆けつけ三杯の餌を食べ終わった猫はようやく炬燵に眠りにいく。

猫につまらぬ思いつきを三回聴かせた私は一応満足する。

引き分けのいち日。