夏なので、ミニシアター系でだいぶ話題になってるとかいう噂のタイ製ホラー映画を見てきました。
ありあまるサービス精神のおかげでだいぶ迷子にはさせられましたが、大変楽しい映画体験でした。
とはいえ、130分というのはこのジャンルの映画としてはさすがにちょっと長すぎで、途中でダレたりはするんですけども、
「映画がダレるくらいでいちいち文句言ってんじゃないよ、甘えるなっ!」
と思いましたですねえ。
最終的にだいぶ面白かったんだから、いいじゃないか。
フェイクドキュメンタリーの手法なんです。
ホラーとしては、当事者の語りに信憑性を持たせるために重々理解できる表現方法ではあるんですが、ずーっと一貫してその見え透いたフェイクの演出がノイズです。
「無駄なフェイク演出やめたら90分で作れるし、そのほうがまとまりあって面白くなるんじゃないのっ?」
って思いながら見てたら、最後ひどい目に合うカメラクルーがワラワラワラワラ湧いてきて、もはや制作陣のほうがゾンビみたいに見えてくる急展開。
それが演出の穴なのかジョークなのかも判別もつかず、途方に暮れて大爆笑という次第でした。
綺麗な女優さんが後半ずっと白目剥いてるのとかも、ある時点から以降はもう完全に可笑しいんです。
それでも心に戸惑いが残るのは、
「いやー、非常に楽しい映画だったけど、あれなんだったんだろう?」
とだいぶ頭をひねりながら歩く帰り道です。
ちょっと落ち着いてことのはじめから順に思い起こすと、インセストタブーを犯して子どもを中絶か死産した若いカップルが村八分にされて精神的に追い詰められていく映画であったようにも取れるんです。
そうだとするとそれ自体は全然おかしくもジョークでもないテーマだと思うんですが、「あれ私の思い違いかな?」って不安になるくらい、その後その話がどこかへ行っている。
「え、じゃあなんでちょっとその話出したの?いる?この流れでさっきの話いる?」
とういう大混乱。
遺影になるためだけに出てきたわりとハンサムなお兄ちゃんはなんだったんだ。
黒い車に「この車は赤い」っていうステッカーが貼ってあり、意味を聞かれた巫女がいわく有りげににやっと笑ったシーンなんかも、ものすごく気になってるんですが、こちらもやはり最後まで何の説明もなし。
まさか「ちょっとやってみただけ」で、思いついたこと全部入れておいたとかっ?
いいんです、一本の映画が全部わかるに違いないなんて、思い上がりもいいところですから、面白ければ監督のやりたいようにやっていただいていいんです。しかし、気にはなるよね。
あと神は答えてくれたのかどうか問題。
代々神と思って仕えてきたものが実は単なる偶像で、一族に伝わる力なんてなかったっていう話なのか、
仕えてきた女神はちゃんと力があったんだけど、自分らのことを憎む人々の願いもまた聞き入れる神だったから刃は自分たちのほうに向いちゃったという話なのか。
本当に頭の中がはてなマークでいっぱいで、煙に巻かれやがれ体験を味わいました。
真面目に意味とか考えちゃいながらみても楽しいし、一切意味を考えずに見ても楽しい。